会社員の頃は税金についてあまり意識しませんが、フリーランスエンジニアになると、かなり税金に対しての意識が高まります。どうしてそんなに意識が違うのでしょうか?
今回の記事では、フリーランスエンジニアが納める税金や、納税の仕方などについて、詳しく解説をしていきます。
この記事を読むことによって、フリーランスエンジニアと税金の関係の理解が深まるでしょう。
もしあなたが、フリーランスエンジニアになろうとしているのであれば、必ず事前に税金について勉強しておくことをおすすめします。
税金を納めることは国民の義務
まず、税金を納めることは日本国民の義務とされています。日本国憲法第30条には、このように定められているのです。
国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
ということで、日本国内に住んでいる人であれば、必ず収入に応じた税金を納めなければいけないと決まっています。税金を納めなければ、罪に問われてしまうのです。
フリーランスエンジニアは会社員とは納税方法が違う
冒頭でも記載した通り、フリーランスエンジニアになると、会社員の時よりも税金に対してシビアに意識するようになります。それは、「フリーランスと会社員では納税の方法が違うから」です。
会社員であれば、毎月の給与から自動的に天引きされる「特別徴収」という方法で税金を納めています。しかし、フリーランスエンジニアになると各自治体から送付される納付通知書を使って納税する「普通徴収」に変わります。
会社員に適用されている「特別徴収」だと、徴収後の手取り金額のみが給与振込されるため、どれくらいの税金を納めたか分かりにくいです。
一方の、フリーランスエンジニアの「普通徴収」の場合だと、自分が稼いできた報酬から税金を納めていく方法になるので、どれくらいの税金を国や自治体に納めているのかがよく分かります。
なので、フリーランスという生き方をしている人の方が、税金に対してシビアに考えがちなのです。そのため、節税方法を自分で工夫したり、税金がどんな使い道をされているのかにも敏感です。
ちなみに、アメリカなどでは全て「普通徴収」という方法が一般的です。そのため、アメリカ国民は日本国民と比べ、税の使い道に対して積極的に意見を言うとされています。
フリーランスエンジニアが納める税金の種類
それでは、実際にフリーランスエンジニアになった際には、どんな税金を納める必要があるのかを挙げていきます。
- 所得税
- 個人事業税
- 住民税
- 消費税
- 国民健康保険税
- 国民年金
フリーランスになると、こういった内容の税金を納める必要が出てきます。会社員の時にも同様に納めているものはありますが、フリーランスになって新たに納めなければいけないものもあります。
順に、どんな税金なのかをご紹介していきましょう。
所得税
1つ目の税金は「所得税」です。所得税は、1年間働いて得られた所得に課税される税金です。
所得と言っても、「総収入額」とは異なります。
フリーランスエンジニアの「課税所得金額」は以下の通りの計算方法で算出されるのです。
所得 = 収入額 – 事業にかかった経費 – 各種控除(基礎控除、青色申告特別控除など)
会社員と違い、フリーランスには「経費を計上すること」が認められています。会社員の時には、経費計上をすることはありませんが、フリーランスの場合だと、その収入を得るためにかかった経費を収入から差し引くことが出来ます。
そして、さらに基礎控除などの控除を差し引くことが出来、最後に算出された「課税所得額」に対して、所得税がかかることになります。
つまり、かかった経費はもれなく計上し、使える控除は出来るだけ活用したほうが、納める所得税額は少なくなるのです。
個人事業税
2つ目の税金は「個人事業税」です。個人事業税を納める業種は法律で定められています。
「法定業種」と呼ばれる70の業種なのですが、フリーランスエンジニアの仕事は「請負業」という区分に分類されるため、個人事業税を納めなければいけない業種になります。
個人事業税の課税金額は、以下の通りの式で計算されます。
課税所得額 = 収入額 – 事業にかかった経費 – 各種控除 – 290万円(事業主控除)
つまり、所得額が290万円を超えていない個人事業主には課税されないのです。
フリーランスエンジニアになって、いきなり初年度から290万円以上所得を得られれば払わなければいけませんが、それほど収入が伸びなければ初めの頃は納めなくてもいい税金になっています。
住民税
3つ目の税金は「住民税」です。住民税は市町村民税が6%、都道府県民税が4%かかり、併せて10%の税率で計算されます。
教育、福祉、救急、ゴミ処理などの各自治体が提供する公共サービスを行うために徴収される税金で、日本に住んでいる人であれば、誰でも納めなければいけません。
ただし、課税される金額は前年の所得によって異なり、その計算方法は各自治体によって微妙に異なっています。
「所得割」「均等割」の計算がそれぞれあり、定められた所得よりも多い人は全員納める必要があります。フリーランスエンジニアの場合は、個人事業主なので普通徴収で納めます。
1年間に4回の納税通知書が送付され、その払い込み用紙を使って納税を行いましょう。
消費税
4つ目の税金は「消費税」です。消費税は、1年間の売上高が1,000万円を超えた個人事業主が支払わなければいけない税金です。
フリーランスエンジニアになりたての頃に、いきなり1,000万円の売上を作ることは難しいと考えられるので、始めの頃は気にしないでいいでしょう。
また、仮に初年度から1,000万円を超えたとしても、納税しなければいけないのは次年度からなので、いきなり消費税を納める必要はありません。
消費税を納めるぐらいに収入が増えてきたのであれば、税理士などに節税方法を相談してもいいかもしれません。
国民健康保険税
5つ目の税金は「国民健康保険税」です。フリーランスエンジニアになると、会社員ではなくなるため「国民健康保険」に加入しなければいけなくなります。国民健康保険に加入している人全員が納めるものが、「国民健康保険税」です。
国民健康保険税は、前年の所得に応じて計算がされ、「均等割」「所得割」「平均割」の方法で支払額が決定されます。もし会社員として勤めていた後に、フリーランスとして独立したのであれば、高額な保険料を請求されるかもしれません。
しかしその後の収入に応じて、保険税は変動してくるので安心しましょう。ただし1年程度は高額な保険税を請求される可能性は高いです。
国民年金
6つ目の税金は「国民年金保険料」です。こちらは、厳密には税金とはちょっと異なりますが、日本国民が全員納めなければいけない保険料になっています。性格的には税金と同様の物です。
国民年金保険料は、一律に法律で定められていて、金額が毎年変化します。ちなみに2022年度の国民年金保険料の支払額は「毎月一人当たり16,590円」です。
会社員であれば「厚生年金」に加入しているため、保険料の半分を会社が支払ってくれていますが、フリーランスエンジニアになると、全額を個人で負担することになるため、支払額が高額に感じられるかもしれません。
フリーランスエンジニアになりたての時に、収入が殆ど無いのであれば、各自治体で国民年金保険料の免除申請も行えるため、一度相談に行ってみることもおすすめです。
フリーランスエンジニアが税金を極力抑える方法とは?
フリーランスエンジニアが税金を極力抑えるには以下の2通りの方法があります。
- 確定申告の際に使える控除をきちんと使う
- 事業にかかった経費をこまめに申告する
この2つを適切に行う事で、課税される所得の金額がかなり変動するので、支払う税金の額を減らすことも可能です。
とはいえ、いきなり「控除」や「経費」と言われても、始めのうちはあまりピンとこないでしょうから、次項以下でちょっと詳しく解説していきます。
フリーランスエンジニアが使える控除を解説
まずは、フリーランスエンジニアが使える控除をご紹介していきます。自動的に控除されるものと、事前に知っておかなければ控除されないものがあるので、ここでよく理解しておきましょう。
基礎控除
1つ目は「基礎控除」です。こちらは収入がある人は全て控除対象となっていて、一律48万円の控除を受けることが出来ます。ただし、年収が2,400万円を超えると、控除額が32万円に減額されます。
医療費控除
2つ目は医療費控除です。一年間を通じて医療機関に支払った医療費が10万円を超えた場合には、控除を受けることが出来ます。ただし、保険金で補填された金額に関しては控除対象外なので、注意が必要です。
さらに、医療費控除は自分で申請をしなければ控除されないので、医療機関を受診されている方は、必ず控除してもらう手続きを行いましょう。
配偶者控除
3つ目は「配偶者控除」です。結婚されている方で、配偶者の年間所得が48万円を下回っている場合は、38万円の配偶者控除を受けることが出来ます。こちらは確定申告を行えば自動的に計算されるようになっているため、申告時に間違えないように配偶者の所得を記入しましょう。
扶養控除
4つ目は「扶養控除」です。扶養控除は16歳以上の扶養家族がいて、年収が48万円以下の場合には、1人当たり38万円から63万円の控除を受けられる制度です。
16歳以上のお子さんがいらっしゃる場合には、控除対象となる可能性もあるので、注意しておきましょう。
青色申告特別控除
5つ目は「青色申告特別控除」です。
この控除は、フリーランスエンジニアになる人には、是非とも活用してもらいたい控除になります。
会社員から独立してフリーランスになった場合、何もせずに確定申告を迎えてしまうと、「白色申告」という確定申告になります。この白色申告では前述した「基礎控除」しか受けることが出来ません。
一方、確定申告を「青色申告」で行うと、この青色申告特別控除を受けられるようになるのです。ただ、青色申告を行うには、少しだけ条件があります。
- 開業届をきちんと提出している事
- 青色申告承認申請書を提出している事
この2点が行われていなければ、青色申告を行う事は出来ません。
フリーランスエンジニアになった際には、個人事業主の扱いになるため、事業を開始してから1カ月以内に「開業届」を管轄の税務署に提出する必要があります。
しかし、開業届を出さなくても事業を行う事は可能な為、開業届を出しそびれてしまうフリーランスもいるのです。
開業届をきちんと出していなければ、青色申告での手続きは出来ないため、当然、青色申告特別控除の「65万円控除」は受けられません。
また、その開業届を提出する際に、併せて「青色申告承認申請書」を提出していなければ、こちらも青色申告は出来ないのです。
どちらの書類も管轄の税務署で記入用紙を貰えますし、そこで記入して申請することも可能なので、フリーランスエンジニアになった際には、必ず行いましょう。
青色申告は白色申告と比べ、帳簿への記帳方法が複雑だとされていますが、近年は色々なメーカーから青色申告用の会計ソフトが沢山発売されているため、初心者でも簡単に申告を行うことが出来るでしょう。
ちなみに、青色申告を行う際に、オフラインで申告してしまうと55万円しか控除が受けられませんが、国税庁の管理する「e-Tax」というシステムを使ってオンラインで確定申告すると、65万円の青色申告特別控除が受けられるので10万円お得になります。
殆どの会計ソフトは、e-Taxと連動しているため簡単なので、必ずe-Taxを使って青色申告を行いましょう。
小規模企業共済
6つ目は「小規模企業共済」です。
小規模企業共済とは「中小機構」という国の機関が運営している積立金の制度で、毎月1,000円から70,000円までの金額を積み立てることが出来ます。
積み立てた金額は、個人事業を廃業した後などに受け取れるため、個人事業主の退職金のような制度です。
そして、この小規模企業共済で積み立てた金額は、全て控除対象になるのです。通常通り資産として計上するよりも、お得な制度となっています。
個人型確定拠出年金
7つ目は「個人型確定拠出年金」です。
個人型確定拠出年金は「iDeCo(イデコ)」とも呼ばれ、自分で拠出した積立金で好きな投機商品を買い、それを運用して老後の年金として受け取れるものです。
個人型確定拠出年金に掛けた金額も、全て確定申告では控除の対象となっています。個人型確定拠出年金は小規模企業共済とは異なり、購入した商品の価値の変動で、受け取れる金額が変わります。
投資額よりも増える場合もありますが、減ってしまう場合もあるので注意しましょう。
ふるさと納税
8つ目は「ふるさと納税」です。
ふるさと納税は「節税効果がある」と勘違いされている可能性も高いですが、節税ではありません。
自分の応援したい自治体に「寄付」を行い、その寄付額から2000円を引いた額が、控除されるという仕組みになります。
さらに、ふるさと納税を行うと各自治体から「返納品」として、その地域の特産品などが送られます。つまり、その返納品の額が2,000円よりも高ければ、フリーランスにお得になる制度なのです。
殆どの自治体が提供している返納品は、2,000円よりも高額のため、ふるさと納税を行うと、控除額が増え、節税とほぼ同様の効果があるのです。
フリーランスエンジニアが税金を抑えるためにかけられる経費
フリーランスエンジニアが税金を納めるには、適切に経費を計上する必要があります。
では、フリーランスエンジニアはどんな経費を計上してもOKなのでしょうか?一般的にフリーランスエンジニアが計上できる経費を簡単にご紹介していきます。経費を正しく理解して計上することで、かなりの節約に繋がります。
地代家賃
1つ目は「地代家賃」です。
地代家賃とは、エンジニア業務をしている事務所の家賃やその駐車場の使用料のことです。自宅兼事務所にしている場合も、作業をする部屋の広さに応じて割合を決め、経費計上することができます。
毎月支払う物なので、必ず経費計上をしないと損をします。
例えば、自宅として使っているマンションの1/4の広さの部屋を事務所として活用しているのであれば、月々の家賃の1/4の金額は、経費として計上してOKです。
殆ど無いとは思いますが、税務署から「どんな考え方で計算しているのか?」を聞かれた際には、きちんと答えられなければいけませんので、根拠を明らかにしておきましょう。
水道光熱費
2つ目は「水道光熱費」です。
フリーランスエンジニアであれば、作業をする部屋の冷暖房費、パソコンにかかる電気代、ガス暖房を入れていれば、それにかかったガス代などを経費計上できます。真夏や真冬は多くの光熱費がかかるはずなので、きちんと計算して計上しましょう。
通信費
3つ目は「通信費」です。
通信費は、インターネット回線の契約料金や、スマホの使用料になります。仕事で使った分は全て計上できるので、どれくらいの割合を仕事で使ったのかを計算して、経費計上しましょう。
クライアントと電話で会話をしたりしたのであれば、その料金は計上してOKです。
外出先などでどこでもWi-Fiが使えるように、ポケットWi-Fiなどを契約していることもあるでしょう。この場合も、全て仕事の為の契約なのであれば、通信費に含めて経費計上を行いましょう。
消耗品費
4つ目は「消耗品費」です。
自宅事務所で使ったコピー用紙やボールペン、机やいすなどは、消耗品費で経費計上できます。日々使っているこまごまとした事務用品を購入した領収はきちんと控えておき、経費計上したほうがお得です。
フリーランスエンジニアであれば、パソコンも購入するでしょうが、殆どの場合10万円を超えるはずなので、10万円以上のパソコンは「減価償却費」の扱いで経費計上できます。
クライアントと打ち合わせの際に、スーツなどを着ていったり、フォーマルな洋服を着ていく際には、その洋服代も消耗品費として計上できます。プライベートで着るための服は経費計上できませんが、完全に仕事でしか使わない洋服があれば、制服代として経費計上することをおすすめします。
旅費交通費
5つ目の経費は「旅費交通費」です。
クライアントと打ち合わせのために遠方に出張に行った際の旅費は、経費計上できます。
ホテル代、駐車場代、高速道路代、ガソリン代、公共交通機関利用料金などがこれに当たります。
プライベートで利用した旅費などは含められませんので、注意しましょう。
接待交際費
6つ目の経費は「接待交際費」です。
こちらはクライアントと打ち合わせの際にかかった、食事代などです。
打ち合わせに使った場所のチャージ代も含めることができます。
ただ、私用で利用した飲食代や、スーパーなどで購入した食材などは接待交際費に挙げられないので、注意してください。あくまでも、クライアントと打ち合わせを行った際の飲食代のみです。
フリーランスエンジニアが税金を抑えるために「租税公課」も使える
さらに、フリーランスエンジニアが税金を抑えるためには「租税公課」という方法も活用できます。
租税公課とは、特定の税金を控除として活用できる制度で、以下の税金が対象です。
- 個人事業税
- 消費税
- 固定資産税
- 印紙税
- 登録免許税
- 自動車関連税
これらの税金は租税公課として、経費計上できるので忘れないように処理しましょう。
注意したいのが「住民税」や「所得税」は租税公課に含まれない事です。
自動車を所有している人は、自動車にかかる税金などを租税公課に含められるので、必ず処理することをおすすめします。
まとめ
というわけで、今回はフリーランスエンジニアが納めるべき税金には、どんな種類があるのか?ということや、フリーランスエンジニアの税金を出来るだけ安く抑えるにはどうすればいいのか?ということなどについて詳しく解説してきました。
正しく節税をすれば、かなりの金額の税金を抑えることが出来ます。フリーランスになりたての頃は、手続きにとまどってしまうこともあるでしょう。
毎年確定申告の度に勉強をし直し、よりお得にフリーランスエンジニアの活動ができるように事前に勉強しておくのがおすすめです!