「フリーランスエンジニアは自由なイメージだが、常駐だと正社員と変わらないのでは?」そんな疑問を持ったことはありませんか?
常駐フリーランスエンジニアは正社員とはまったく異なる働き方です。サラリーマンと比較しながら、常駐フリーランスエンジニアの働き方について解説します。
常駐フリーランスエンジニアの働き方
「フリーランス」というと時間や場所に縛られない自由な働き方と思われがちですが、常駐のフリーランスエンジニアは決められた時間で指定された場所に出勤して働きます。
常駐フリーランスエンジニアの働き方について詳しく解説します。
客先に行って働く
クライアントの指定する場所にいって働くことを「客先常駐」といいます。
客先常駐のフリーランスエンジニアは始業時間までに出社して、正社員と机を並べて同じ社内で働きます。一見サラリーマンと同じような働き方です。
仕事の内容は契約によって決まる
どんな仕事をするのかは、契約によって決まります。
サラリーマンは会社が求める仕事を何でもこなすのに対し、常駐フリーランスエンジニアは契約した分の仕事のみをおこないます。
サラリーマンであれば電話対応などの雑務も業務の範囲ですが、フリーランスエンジニアは技術職だけに集中して業務をおこないます。
勤務時間は契約で決まる
常駐フリーランスエンジニアの勤務時間は案件によってさまざまです。
フルタイムの案件では「月140〜180時間」という契約が一般的。月20日働くと仮定して1日あたりの労働時間は7〜9時間になります。
出勤時間や退勤時間は多くの案件で決まっています。「10時から19時まで」のように指定されているので契約通りに出社して仕事をすることになります。
時短勤務やフレックスタイムの案件もあります。事情があって時間を選びたい場合は契約時に交渉しておくといいでしょう。
SESと常駐フリーランスエンジニア
客先常駐の働き方でもっとも有名なのはSESです。SESとは「システム・エンジニアリング・サービス」の略。SES企業は特定の業務に対して「技術者の労働」を提供します。
SESの場合、まずはSES企業の社員という形で雇用されます。SES企業に雇用されたうえで、派遣先に出向いて「客先常駐」として労働を提供します。
SES企業がフリーランスエンジニアと契約して、フリーランスエンジニアを顧客企業に派遣する場合もありますが、必ずしも「SES=常駐フリーランスエンジニア」ではありません。
非常駐のフリーランスエンジニアもいる
フリーランスエンジニアの働き方には客先常駐型ではないものもあります。
リモートワークの案件では客先ではなく自分の好きな場所で働くことが可能です。「週に一度だけ出勤し、その他は在宅」といった、在宅と出勤のハイブリッドもあります。それぞれの案件によって条件は異なります。
IT業界は機密保持の観点から、リモートワークが少ない業界でした。しかし、コロナ禍で在宅勤務が普及したため、現在はリモートワークの案件も増えてきています。
技術力の高いフリーランスエンジニアであれば非常駐の交渉もしやすくなります。
常駐フリーランスエンジニアとサラリーマンの違い
常駐フリーランスエンジニアも、正社員と同じ場所で机を並べて働くことになります。はたから見れば同じような働き方です。しかし、雇用形態はもとより働き方も大きく異なります。常駐フリーランスエンジニアとサラリーマンエンジニアの違いを解説します。
契約の範囲内で働く
フリーランスエンジニアは契約の下で働きます。最初に取り決めた契約にない仕事は任されません。よかれと思って契約範囲外の仕事をしてしまうとトラブルになる可能性もあります。
常駐フリーランスエンジニアはまかされた仕事のみをおこなうので、技術に集中して働くことが可能です。伸ばしたいスキルの案件を選べば、より効率的にスキルアップがはかれます。
労働時間に関しても、合意なく契約した範囲を超えることはないでしょう。
サラリーマンエンジニアの業務範囲は際限がない
サラリーマンエンジニアは会社に雇われて働いているので、会社にとって必要な業務はなんでもこなさなくてはなりません。エンジニアであってもメール対応、来客の対応などの雑務をする場面もあるでしょう。
やりたくない仕事であっても断りにくいのがサラリーマンです。フリーランスエンジニアは契約段階でやりたくない仕事を断ることができます。
サラリーマンエンジニアよりも儲かる?
一般的に常駐フリーランスエンジニアはサラリーマンエンジニアよりも高収入といわれています。人気の言語でフリーランスエンジニアの単価相場を見てみると次のようになります。
言語 | 平均単価(月) | 最高単価(月) |
Java | 69万円 | 165万円 |
PHP | 72万円 | 145万円 |
※参考 : 単価相場 | ITフリーエンジニアのための【レバテックフリーランス】
これは在宅案件も含めた単価なので、常駐案件だけならさらに平均単価が上がるでしょう。
とくに20〜30代はフリーランスエンジニアのほうが稼ぎやすいといわれています。
フリーランスエンジニアは正社員のように雇用し続ける必要がありません。いつでも契約を切れる状態のため単価が高いのです。
時短勤務の案件を2つかけもちして報酬を増大させるフリーランスエンジニアもいます。時短勤務であれば副業で稼ぐことも可能です。
収入源が限られるサラリーマンエンジニアよりもさまざまな稼ぎ方があり、その分年収アップが見込めます。
ただし、フリーランスエンジニアの報酬額はサラリーマンの手取りとは違います。フリーランスエンジニアはここから経費や保険料が引かれることになるので注意が必要です。
50代ではサラリーマンのほうが儲かることも
年をとれば年功序列でサラリーマンのほうが儲かるケースがあります。サラリーマンは年齢が上がると技術職から管理職にシフトしていく場合が多いです。管理職になれば収入も上がります。
常駐フリーランスエンジニアには昇格制度がないので、強みとなる技術がなければ後々サラリーマンよりも年収が下がってしまう場合があります。
常駐フリーランスエンジニアのメリット
常駐フリーランスエンジニアにはサラリーマンエンジニアにはないメリットがあります。フリーランスエンジニアならではの利点を3つご紹介します。
やりたい仕事が選べる
フリーランスエンジニアは契約前にどのような仕事内容なのか確認することができます。
サラリーマンは会社の都合で仕事を与えられますが、フリーランスエンジニアは好きな仕事が選べます。自分の高めたい能力にあわせた仕事をすれば、その分理想のスキルアップが実現するでしょう。
労働時間が決まっている
常駐フリーランスエンジニアは契約の範囲内で働きます。そのため、契約にない無償労働を強いられることはありません。
サラリーマンであれば断れない残業をしなくてはいけないこともあるでしょう。一方のフリーランスエンジニアは契約にない労働を断ることができます。
労働時間がきちんと決まっているので退勤後の予定が立てやすくなります。趣味の時間を作る、勉強会に参加するなど、好きな予定を立てられるのがフリーランスエンジニアのメリットです。
上司の顔色をうかがわなくていい
誰かの顔色をうかがったり、ゴマすりをしたりしながら働くのは気苦労がたえません。
フリーランスエンジニアには上司がいないので、気兼ねなく業務に集中して働くことができます。実力勝負の世界です。人間関係で出世が妨げられることがないので、スキルを磨けばそれを武器に戦っていけます。
常駐フリーランスエンジニアのデメリット
メリットがある一方で、デメリットもあります。常駐フリーランスエンジニアならではのデメリットを3つご紹介します。
いつ契約が切れるかわからない
正社員であれば、契約期間はありません。普通に働いていればいきなり職を失うことはないでしょう。
それに対し、常駐フリーランスエンジニアの契約期間は1~3カ月です。継続になる場合もありますが、少なくとも3カ月に1度は仕事がなくなる危機にさらされることになります。
「いらないと判断されたら仕事がなくなる。」そんな不安が心理的ストレスになる場合もあります。
また、コロナ禍において契約を切られた常駐フリーランスエンジニアは少なくありません。過去にはリーマンショックなどでプロジェクトごと打ち切りになったケースもあります。
「能力さえあれば安心」というわけではないので注意が必要です。
仕事と能力のミスマッチがおきやすい
正社員として企業に属していれば、企業の中でキャリアが形成されていきます。企業があなたの能力を把握してくれているので、新たなプロジェクトでも能力とかけ離れた仕事をまかされることはありません。
一方で、フリーランスエンジニアは契約ごとに面談をおこなって仕事が決まります。仕事の詳細は行ってみないとわからないことも多く「現場に行ったらまったく知らないプログラミング言語だった!」といったミスマッチが起こる可能性があるのです。
スキルが身につかない仕事が多い
企業には「正社員を成長させたい」という気持ちが強くあります。ずっとその企業で働き続ける人と、いついなくなるかわからないフリーランスエンジニアが並んでいたら、どちらを成長させたいかは火を見るよりも明らかです。
常駐フリーランスエンジニアの成長まで考えてくれる企業はそう多くはないでしょう。
案件によってはテスト作業をひたすら繰り返すような成長につながりにくい仕事をフリーランスエンジニアにまかせている場合があります。
自分でキャリアを描き、時には断るといった判断が必要になります。
常駐フリーランスエンジニアになる方法
ここまで、常駐フリーランスエンジニアの実態についてみてきました。では、どのようにして常駐フリーランスエンジニアになればいいのでしょうか。
常駐フリーランスエンジニアになるための方法と必要な準備を解説します。
ベストタイミングは20代?
収入だけを考えれば、フリーランスエンジニアの恩恵を一番受けられるのは20代です。年を重ねると年功序列で会社員として働いた方が稼げる場合があります。
ただし、常駐フリーランスエンジニアはスキルを武器にする働き方です。スキルが身についていないうちからフリーランスになると好案件を獲得できません。
ある程度経験を積んで、自分のスキルに自信がついたタイミングでフリーランスエンジニアになるのがベストタイミングです。
今の自分の実力で獲得できる案件があるのか不安な場合は、エージェントに登録すればカンタンに調べることができます。調べるだけなら会社員であっても大丈夫です。
辞める前に市場調査をおこなって、ベストタイミングを見計らいましょう。
事前に必要な準備は?
いきなりフリーランスエンジニアになると、思ってもみなかった問題に躓いてしまうかもしれません。
常駐フリーランスエンジニアになる前にやっておいたほうがいい事前準備をご紹介します。
技術を身につける
フリーランスエンジニアになるには、自分の強みとなるたしかな技術が必要です。商談テクニックだけで案件を獲得しても現場で活躍できなければ、すぐに契約を切られてしまいます。
正社員のように会社が育ててくれることを期待することもできません。
まずは「これだけは自信がある!」というたしかな技術を身につけましょう。
スキルシートを作成する
フリーランスエンジニアには契約時に「自分のスキルを伝える商談」があります。そこで必要になるのがスキルシートです。
スキルシートには自分のこれまでの経歴や持っている技術を書きます。履歴書よりもスキルに特化した内容を書き、相手に自分の能力が的確に伝わるようにします。
- 個人情報
- 経験してきたプロジェクト
- 習得しているスキル など
フォーマットに決まりはないので、相手に伝わりやすいように簡潔にまとめておきましょう。自分を大きく見せるような内容はNGです。能力を勘違いされて登用されるとプロジェクトが始まった時にトラブルになりかねません。たしかな実績と誠意が伝わるスキルシートを作成してください。
人脈を広げる
常駐フリーランスエンジニアとして好案件を獲得するために、なるべく人脈を広げておきましょう。
- 現在の取引先にツテをつくる
- 勉強会に参加する
- SNSやオンラインサロンで繋がりをつくる など
フリーランスエンジニアは不安定ですが、人とのつながりがあれば安定感のある仕事ができます。
仕事を紹介してもらえる強い人脈を作るには「先に相手に与えること」が大切です。周りに困っている人がいればどんどん助けてあげましょう。
人は「返報性の法則」をもっているので、何かをしてもらうと返したくなります。
利害を気にせず人を助ける精神があれば、フリーランスエンジニアとして独立した時にきっと助けてもらえます。
税金・年金・保険の確認をする
会社員と違い、常駐フリーランスエンジニアは「お金」の手続きが必要になります。
日本は「申告納税制度」ですので、フリーランスになれば自分で報酬や経費を管理して申告する必要があります(確定申告)。
確定申告をおこなわないと、あなたの収入は0円とみなされます。社会的な信用を失いかねないので、税金や保険に関する知識を身につけておきましょう。
知識をつけておけば、税金で損しないフリーランスエンジニアになれます。
仕事(案件)を見つける
準備が整ったら案件を獲得しましょう。案件獲得には次の2つの方法があります。
- エージェント経由
- 直接契約
人脈がない状態で仕事を探すときはエージェント経由のほうが見つかりやすくなります。
直接契約では営業する必要がありますが、顧客が支払った金額がすべてあなたの報酬になります。
どちらにもいい点と悪い点があるので、見極めたうえで案件の獲得方法を決めてください。
エージェントを利用する
エージェントには豊富な案件がそろっています。相談すればあなたにぴったりの案件を紹介してもらえるでしょう。ただし、「顧客が支払う金額の10%前後がエージェントのマージンになっている」といわれています。報酬が減ってしまう点に注意が必要です。
エージェントサイトから登録して、問い合わせるだけでカンタンに仕事を紹介してもらえます。登録は無料でできるので、そんな案件があるか気になる方はあなたの条件を登録してみてください。
自分で営業し直接契約する
エージェントを利用しなくても、自分で直接企業と契約することもできます。知人や既存の取引先に紹介をお願いし、仕事につなげてもらいましょう。
人の繋がりで仕事を紹介してもらえば、ある程度「あなたを知ってもらった状態」で契約できるのでミスマッチがおこりにくいです。
ただし、トラブルなどが発生したときも自分で交渉を進めなくてはなりません。知人の紹介だと契約をあいまいにしてしまいがちですが、のちにトラブルになるケースがあります。
直接契約の場合もしっかり契約を結んでから仕事を開始してください。
SNS経由でも仕事を獲得できる
SNSでの発信から仕事の依頼がくることもあります。無料で始められるので、次のようなSNSで情報発信するのもおすすめです。
- ブログ
- YouTube
情報発信をするときは、自分の強みを明確にしましょう。「なんでもできるエンジニア」では仕事の依頼はきません。「○○なら私にお任せください!」といった発信を続けると、仕事に繋がりやすくなります。
昇給制度がないフリーランスエンジニアにとっては、フォロワー数があなたの強みになります。困ったときにSNSで相談してみると、思わぬ共感や解決策が得られるかもしれません。会社に属さない常駐フリーランスエンジニアだからこそ、SNSでの繋がりを大切にしましょう。
フリーランスエンジニアが常駐で働く際の注意点
フリーランスエンジニアが常駐で働く上での注意点をまとめました。フリーランスエンジニアには守ってくれる人がいません。労働基準法も適用外です。
「こんなはずじゃなかった!」と後悔しないように十分注意してください。
実務経験が1年以上ないと案件が獲得しづらい
常駐フリーランスエンジニアには即戦力が求められます。わからないことを手とり足とり教えてくれる案件はないでしょう。まったくの未経験から仕事を探すのは困難です。
最低でも1年は実務経験を積んで、自分の強みをつくってからフリーランスエンジニアになりましょう。
3年以上の実務経験があると案件を獲得しやすくなります。
地方だと好案件が獲得しにくい
常駐フリーランスエンジニアの案件はほとんどが首都圏です。圧倒的に条件がいいのは東京。次に条件がいいのは大阪などの地方都市です。地方に行けば行くほど仕事がないため選べない上に報酬も低くなります。
常駐フリーランスエンジニアを目指すなら、東京近郊に住むことをおすすめします。
キャリアプランは自分で描く
会社員の場合、所属する企業があなたの将来を考えて仕事を与えてくれます。上司とキャリアについて相談しながら次の仕事を決める場面もあるでしょう。
しかし、常駐フリーランスエンジニアのキャリアプランは誰も考えてくれません。せっかく20代で高収入を得たとしても、40代、50代で失速してしまうケースが少なくないのです。
とくにエンジニアは50代以降に技術一本で食べていくのが難しい職種だといわれています。目の前の仕事をがんばるのはもちろん大切ですが、10年後、20年後まで見据えたキャリアプランを自分で考えておくことが大切です。
契約にない労働はしてはいけない
正社員は会社に求められる仕事を何でもしなくてはなりません。しかし、常駐フリーランスエンジニアは契約にない仕事をするとトラブルになるケースがあります。
気配りのできる人はとくに「困っている人を助けたい」という思いから、契約にない仕事にも関わってしまいがちです。
しかし、そこでおきたトラブルは自己責任になってしまいます。契約外の仕事はやらないほうがいいでしょう。
「自分の身は自分で守る」という意識が常に必要です。
まとめ
常駐フリーランスエンジニアの働き方について解説しました。
サラリーマンエンジニアとの1番の違いは常に自己管理する必要があることです。法律や税金に関することから、自分のキャリアプランや健康管理に至るまで、常に「自己管理」の意識が必要です。
しかしその分、報酬や自由度が高く理想の未来を実現できます。「なりたい自分」がある人は、常駐フリーランスエンジニアが叶える道になるかもしれません。