エンジニアの独立──準備・手続き・リスクへの対処法

エンジニアの独立キャリア

「腕も上がってきたし、そろそろ独立するか」と考えているエンジニアも多いことでしょう。

「独立」という言葉には、自由でのびのびしたイメージと、小さくて荒波に揉まれるイメージの両方があります。独立を語る際には、この両面を見なければなりません。

さらなる高みや自由気ままさを求めて独立したはいいけれど、うまくいかなかった──そんなことにならないために、どう準備し、何を学ぶべきか、一緒に考えていきましょう。

独立すべき人とは?

自由の女神

本稿では、エンジニアの独立を「会社員としてエンジニアの仕事をしている人が、会社を辞め、個人として、あるいは自分の会社を立ち上げて、エンジニアの仕事を続けること」と定義します。仕事内容が本質的に変わるわけではないものの、立場が変わるというイメージです。

社員エンジニアとして安定した収入を得ているのにあえて独立しようという人には、やはりそれなりの理由があることでしょう。収入や働き方をより良くしたいとか、組織に縛られないほうが合っているなど様々なことが考えられます。少なくとも「ただただ会社を辞めたい」というような理由では独立はおぼつかないでしょう。

ここでは、そうした「独立すべき理由」について見ていきます。

年収を増やしたい

独立する動機として大きなものは、やはり収入でしょう。

会社員ならば、急に給料が下がったりすることは考えづらい代わりに、突き抜けた高収入にはなかなかなりにくいものです。その背景には、会社自体が利益を追求する組織なので、会社が得たお金をすべて社員に分配するわけではないということがあります。

また、会社はエンジニアだけで成り立っているわけではありません。営業や経理などの部署があるおかげで、エンジニアは開発などの仕事に集中できるのです。社員エンジニアは、当然そういう他の部署の人達とも、お金を分け合うことになります。

それに対して独立した場合には、やればやっただけ、自分の利益になります。高単価案件を受注し続けることができれば、かなりの高収入も夢ではありません。

ただし、「やればやっただけ」というのには、エンジニア本来の業務以外の営業や経理などといった仕事も含まれます。高単価案件を受注するためには、営業活動をかなり頑張らなければならないかもしれません。もしそういう仕事を他の人に任せれば、人件費がかかってきます。

高収入を目指して独立するならば、こうした点も考慮に入れる必要があります。本当に収入が上がるほど仕事が取れるのか、また、手間やコストに見合うだけの収入アップが見込めるのかを十分に考えなければなりません。

そのほかにも、社会保険料を全額自分で負担するなど、会社員よりも個人事業主が不利な点もあります。それらを計算に入れた上でなお、収入増になるかは、事前に予想するのが困難であり、独立を目指す人々にとって永遠の課題です。

自分のペースで働きたい

収入面よりも、働き方を変えて自由な時間を増やしたいというのも独立の有力な動機になります。

会社員よりも仕事量をコントロールしやすい独立エンジニアは、休みを増やしたり、1日の労働時間を減らしたりしやすいと言えます。そのぶん、趣味や家族のために費やす時間を増やすことが可能になります。

ただし、100%思った通りの働き方ができるとは限りません。あまりにも受注を減らしてしまうと大幅な収入減になってしまいます。また、フリーランスでやっていると、先々受注が細ったときに備えて、受注できるうちにたくさん受注しておこうという心理が働くこともあります。

そして、社員であろうと独立していようと、案件に納期があることには変わりありませんから、納期前に激務になりやすいのもほぼ同じです。

こういったことを考えてもなお、会社員である今よりもっと自由が欲しいと思えるなら、独立を考えるべきと言えるでしょう。

営業力に自信がある

独立してやっていけるかどうかは、継続して仕事を受注できるかどうかにかかっています。そこで物を言うのが営業力です。

もちろん受注した仕事をやりきるだけの技術力があることが大前提ではありますが、その技術力があることをどうやってアピールするかということも非常に重要です。

多くのエンジニアは、独立後に苦労して営業スキルを身につけたり、コストを支払ってエージェントに頼ったりするわけですが、中にはやすやすと営業活動をこなすエンジニアもいます。

どうやら世の中には「天性の営業マン」とでも呼ぶべき人達がいるようです。そういう人が、どういう巡り合わせかたまたま社員エンジニアをやっているような場合には、独立の大きなチャンスです。自分がそれに該当すると感じたならば、チャレンジしてみる価値はおおいにあります。

ただし、一度も営業活動をしたことがなければ、営業の才能があるかどうかはわかりません。そういう場合は、もし可能なら副業をするなどして確かめてみる手もあります。

独立の形

オフィス

一口に独立と言っても、いろいろな形があります。個人事業主としてやるのか法人を設立するのか、1人でやるのか複数人でやるのか、など、様々なケースが考えられます。

ここでは、それらの中でも「フリーランス」として活動する場合と「起業」する場合を考えます。

フリーランス

独立の形として多いのは、フリーランスとして働くというものです。いくつかの手続きをすれば、さほどのコストもかからず始められます。割と手軽な独立と言えます。

フリーランスエンジニアでも、いきなり法人を設立することは可能ですが、それにはコストもかかるので、個人事業主としてスタートするのが一般的です。本格的に儲かりだしてから法人化を考えるのがよいでしょう。

フリーランスエンジニアの働き方は多種多様ですが、自分の得意分野の案件を中心に、営業活動をして受注するのが基本になります。営業先としては会社員時代の人脈を活かすというのが有力ですが、その他にもクラウドソーシングを使って受注することもできます。

営業が苦手、あるいはそちらに時間を割きたくないという人には、フリーランスエンジニア向けのエージェント会社がたくさんありますので、それらを利用することもできます。

起業

起業というのは、文字通り「事業を起こすこと」です。元来、個人であろうが法人であろうが、一人であろうが複数人であろうが関係ないのですが、ここでは「自分が社長となって会社を設立し、従業員を雇う」あるいは「誰かと共同経営者になる」という方向で考えてみます。

こういう形での起業をする目的は、「世の中に貢献したい」とか「世の中を変えたい」、または「大きく儲けたい」というようなものでしょう。「エンジニアとして、イノベーションを起こしてやる」くらいの気概が欲しいところです。

会社を設立するのにも人を雇うのにも、お金がかかります。自己資金でまかないきれないならば、借り入れるなどして資金調達する必要があります。借金がかさんで資金繰りがつかなくなれば、倒産の危機です。

より大きなリスクがあるため、会社を設立する前には、個人として開業する場合よりもさらに念入りに準備をしなければなりません。経営について学ぶことも必要です。

そのようなリスクを負って起業するからには、「ご飯が食べていければいい」というような目標では不十分です。それならばフリーランスエンジニアで十分です。いや、そもそも会社を辞めるべきかも怪しいところです。

現在では巨大IT起業となっている会社の多くも、最初はエンジニアが独立して設立したベンチャー企業でした。あなたが設立する会社も、いつかそうなるかもしれません。

独立の準備

釣り人と海

独立するためには、周到な準備が必要です。何のプランもなく、右も左も分らないまま会社を辞めてしまうのは危険です。

独立したら仕事をしなくてよくなるわけではありません。仕事はし続けるのです。ただ、立場が変わります。その変化に対して備え、踏むべき手続きを踏む必要があります。新たなスキルも獲得しなければなりません。

会社員時代に持つべきもの

どのような形での独立を目指すにせよ、会社員生活に比べればリスクがあります。そのことを意識して、会社員時代にやれることをやっておきましょう。

ポイントは、独立したら会社員時代のことがすべて無になるわけではなく、むしろ会社員時代に得られることを活かして働くほうが有利であるということです。

具体的には、以下のようなものを会社員時代に持っておきましょう。

スキル

まず、持つべきものの筆頭はエンジニアとしてのスキルです。これがなければ始まりません。

会社というのはありがたいところで、給料をもらいながらいろいろな技能を身につけることができます。仕事を通して先輩や周りの社員に教えてもらえることもあるでしょうし、業務の一環として研修に参加させてくれるところもあるでしょう。資格取得の支援をしてくれるかもしれません。

会社員としての特典を活かして、学べることは貪欲にどんどん学びましょう。それはなにも特別なことではありません。日々普通にまじめに働き、学ぶ。この積み重ねがすなわち独立への準備となるのです。

人脈

人脈も、大きな財産です。独立したエンジニアの多くは、会社員時代に付き合いのあった人から仕事をもらっています。

独立を考えるのなら、同じ会社や取引先の人々と広く付き合うことをお勧めします。会社という組織から離れてしまうと、なかなかそういうことができなくなります。会社員であるうちに、できるだけ人脈を広げておくのです。

会社を辞めたら人間関係をスパッと断ち切るのではなく、会社を辞めたあとも人間関係をそのまま続けるくらいのことを考えましょう。辞めた会社から案件を振ってもらえるようなことがあれば、人脈作りは大成功です。

貯金

独立に際して、先立つものはやはりお金です。独立当初の実績のないうちは、案件受注に苦労するかもしれません。そんなときに頼りになるのが貯金です。

具体的にいくらあればいいかというのは、一概には言えません。結婚しているか、子供はいるか、などの状況によっても違ってきます。だいたい1年くらい、収入がなくても暮らしていけるくらいの貯金があれば、独立当初としては上出来でしょう。

逆に、会社員エンジニアとしてコツコツ働き、そのくらいの貯金が貯まってから独立を考え始めるくらい慎重になったほうがよいかもしれません。

貯金額は人生設計にとってとても大きなファクターで、それによって独立の形が変わってくる可能性もあります。十分に余裕があればセミリタイアのような形であまり働かなくてよいかもしれません。場合によっては、独立どころか早期リタイアで悠々自適、ということだって考えられます。

クレジットカード

一般に、金融機関や信販会社からの信用は、フリーランスよりは会社員のほうが高い傾向にあります。フリーランスになると、クレジットカードの審査に通りにくくなる可能性があります。

そういうわけで、もし独立を考える会社員がクレジットカードを持っていないのならば、会社員であるうちに1〜2枚作っておくことをお勧めします。今現在使っていない人には実感しづらいかもしれませんが、クレジットカードは非常に便利です。ただし、ご利用は計画的に。

同じように、住宅ローンなども会社員時代に組んでおくほうがよいでしょう。フリーランスになってからでは審査に通らない可能性があります。ただし、独立前にローンを抱えるのが得策かどうかはよく考える必要があります。

独立のための手続き

独立するときには、いくつかの手続きをすることになっています。

株式会社などの法人を設立する場合はたくさんの書類が必要で手続きをすべて自分でやるのは大変なのですが、ここでは個人事業主としてやっていく場合に絞って解説します。

個人事業主の場合は、手続きはさほど難しくありません。

開業届

個人事業主になるにあたって提出する書類が、「開業届」です。個人事業を始めた旨を、税務署に届け出るのです。

開業から1ヶ月以内に提出することになっていますが、別に出さなかったからといって咎められるわけではありません。ただ、提出しておくと、税制上様々なメリットが受けられます。また、大きな控除を受けられる青色申告をするためには、開業届の提出が必須となっています。

税務署とは確定申告などで付き合うことになりますから、一度視察するつもりで開業届を出しに行くことをお勧めします。

国民年金

会社員から個人事業主になることで、大きく変わるのが社会保障関係です。年金は、厚生年金から国民年金に切り替わります。市区町村役場に行けば、比較的簡単に手続きすることができます。

国民健康保険

個人事業主は、基本的に国民健康保険に加入します。保険証は、会社が加入している社会保険のものから、国民健康保険のものへ変わります。これも、市区町村役場の窓口で手続きをします。

ただし、2年間は会社の健康保険に継続して加入してもよい、「任意継続」という制度もあります。会社員時代には会社が半額負担してくれていた保険料を全額負担することになりますが、それでも国民健康保険よりは保険料を安く抑えられる可能性があります。ただし家族構成などによっても違ってくるため、どちらが得かを見極めるには熟慮が必要です。

独立後に習得すべきスキル

独立はゴールではなくスタートです。エンジニアとしての仕事は続けるわけで、そのために新技術を習得するなどの勉強は欠かせません。

独立してフリーランスなどとして働く場合には、技術的なこと以外のこともいろいろと学ぶ必要があります。一人でやっていく場合には、エンジニアの他に、経営者、営業職、会計係を兼務するわけで、大忙しです。

これらのことは、事前に学習しておくというよりは実際にやりながら身につけていくものです。

会計

独立するにあたって、会計事務をどうするか気になっている方もいることでしょう。確かに、個人事業程度の規模でも会計はややこしくて面倒なので、苦手とするフリーランスが多いのも事実です。

しかし、難しいと感じるのは多分最初だけで、慣れてしまえばどうということはありません。会計処理を簡単にしてくれるソフトもありますし、マニュアル本もたくさん出ています。

慣れれば慣れるほど作業にかかる時間は短縮されていき、流れるように確定申告を済ませることができるようになります。

けれども、いつまでたっても面倒なものは面倒、と思う人も少なくありません。中には、仕事の合間の気分転換として会計事務をやるという人もいます。いろいろ工夫して、上手に会計と付き合っていきましょう。

スケジュール管理

自由な働き方をしたいというとき、鍵になるのがスケジュール管理です。休みを増やしたいと思って独立したのに、逆に忙しくなってしまったなどということがあっては何をやっているか分りません。

スケジュール管理の肝となるのは、自分の作業時間の見積もりです。簡単にできると思っていた仕事だったのに、思わぬ「伏兵」が潜んでいて大幅に時間オーバーしてしまうということは起こりがちです。正確な時間の見積もりには、かなりの経験を要します。

常駐案件で定時に出勤・退勤するような場合にはまだ大丈夫ですが、在宅で案件単位の受注を行っている場合にはスケジュール問題には十分気をつける必要があります。仕事をすればするほど収入が増えるとはいうものの、過密スケジュールで成果物の品質が落ちて信用を失ったり、体調不良で倒れてしまったりしては元も子もありません。

気付いていない人も多いようですが、スケジュール管理も学習可能なスキルです。ただし、学んで上達しよう、という意識がなければ、なかなかうまくなりません。日々反省し、ゆっくりとでも上達していって、仕事と私生活の充実を図りましょう。

今では、スケジュール管理・タスク管理を補助してくれるアプリもたくさん出ていますから、いろいろ試して自分に合ったものを使ってみることをお勧めします。

営業

独立したてのエンジニアの多くが痛感するのが、営業力の大事さです。自分が有名人で、向こうからどんどん仕事が来るというなら別ですが、そういう方は非常に稀です。

また、「営業の天才」で、それほど努力しなくても面白いように仕事が取れるというのなら、何も申上げることはありません。しかし、そういう方は「天才プログラマー」と同じくらい、希少な存在なのです。

何を言いたいのかというと、独立したエンジニアのほとんどが、何らかの形で営業スキルを学んでいるということです。みんな苦労しているのです。

ただし、天才的にどんどん案件が取れる必要はささらありません。調子に乗って次から次へと受注してしまっては、上に述べたようなスケジュール問題が発生するだけです。

自分がこなせる案件数だけ取れる、身の丈にあった営業力さえあれば十分です。最初は苦しいかもしれませんが、実績を積んでいけばだんだんと営業は楽になっていきます。過度に怖がらず、ゆるゆると取り組みましょう。

もし、卓抜した営業力があり、いくらでも案件を取ってこれる自信があるのなら、いっそ会社を設立し、自分は社長として営業活動と陣頭指揮に徹し、開発の現場は社員に任せる、というアイディアもあります。

フリーランスエンジニアの営業についてはこちらの記事で詳しくまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ

エンジニアとして独立することは、なかなか険しい道です。そのぶん、チャレンジしがいのある道でもあります。後悔のないよう十分準備をした上で、チャンスをつかんでください。

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