エンジニアになるためには、たくさんの時間をかけて勉強する必要があります。それだけの努力をしたのに、IT業界が右肩下がりになり、仕事が激減してしまってはたまりません。果たしてこの業界に将来性はあるのでしょうか?
また、自分は将来も業界から求め続けられる人材になれるのかと、自分自身の将来性に不安を持つエンジニアもいるかもしれません。
この記事では、そうしたモヤモヤを抱える皆さんのために、エンジニアにとっての将来性について本質的なところから考えていきます。
エンジニアに将来性はあるのか
最も根本的な疑問から始めます。ITエンジニアという職業に、将来性はあるのでしょうか?
先に結論を言えば、あります。
様々なことが現役エンジニアやエンジニアを目指す方の心配事になっているかも知れませんが、大丈夫です。少なくとも当分の間は、エンジニアの仕事が全くなくなることはありません。
ここからは、多くの方が持っているであろう心配にひとつひとつ答えていきます。
需要が枯渇する?
まず、一番大きな懸念として浮かんでくるのは、エンジニアに対する需要がなくなってしまうのではないか、ということでしょう。
インターネットが普及し始めた当初にも、そんなことを言う人がいました。「一度インフラが整備されてしまえば、そのあとはITの仕事はなくなる」とか、「インターネットは一時的なブームで、あとは下火になる」といった具合です。
確かに、2000年代初頭、ITバブルが崩壊していく過程では、それが本当だと信じた人も多かったでしょう。しかし今になって振り返れば、あのような発言がいかに的外れであったのかが分かります。
インターネットにつながるデバイスとして、主役がパソコンからスマホになったという変化はありましたが、それでエンジニアの需要が減ったわけではありません。むしろますます増えているくらいです。
そのうち、スマホの次の何かが出てくる可能性も大いにあります。そうしたら、エンジニアの需要は今以上に爆発的に増えるかもしれません。
ITインフラは一度整備してしまえば終わりではなく、更新し続けるものです。ハードもソフトもどんどん進化していきますから、新しいものに置き換わっていくのです。
Webサイトひとつとっても、見た目や中身をリニューアルすることはよくあることです。その裏では、エンジニアたちが忙しく働いています。
人材があふれかえる?
エンジニアが増えすぎて、自分のところに仕事が回ってこなくなる、そんな将来を思い描いてしまう人もいることでしょう。
学校でプログラミングが必修化されたので、プログラミングができる人が今後増えていくことが予想されます。そういう人がどんどん労働市場に参加してくれば、エンジニアの価値は暴落してしまうのではないか————
この考えは一見正しいように思えますが、見落としがあります。そもそも人材不足がはなはだしいからプログラミングが必修化された、ということです。この政策がうまくいってIT人材が増えたとしても、元々足りない分を補う程度で、人材があふれかえるという事態は考えなくてもよいでしょう。
そもそも、普通の学校で教える程度のプログラミングでは、エンジニアにはなれません。学校の授業だけで英語の通訳になれるわけではないのと同じことです。学校以外でも相応やらなければ、業務レベルのプログラミングはできません。
普通の小学校、中学校、高校における教育の役割は、入り口を用意することであって専門家を育てることではありません。大学の医学部を増やしすぎたら医者があふれかえってしまう、というような話とは違うのです。
AIによる自動プログラミングの脅威は?
将来は機械が自動的にプログラミングするから、人間のエンジニアは必要なくなるのではないか。そういった懸念の声もあります。
実際、自然言語をプログラミング言語に変換する技術はすでに存在します。ただし、それはまだ簡単なプログラムに限られており、大規模な開発をまるごと行えるようなものではありません。
将来的にはAIによる自動プログラミングは相当な程度発展すると予想されますが、それは人間の開発者を支援するという方向でのことになるでしょう。AIは、エンジニアのライバルというよりは一緒に仕事をする仲間という感じです。
AIによるプログラミングの自動化についてはこちらの記事でも詳しく紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
IT業界における将来性とは
将来性には、「業界全体の将来性」「業界内の分野ごとの将来性」「個人個人の将来性」が考えられます。IT業界全体の将来性については、上で「ある」と述べました。
それでは、IT業界内のどんな分野に、将来性があるのでしょうか。また、どんなエンジニアに将来性があるのでしょうか。ここではそれらについて考えてみます。
将来性のある分野
IT業界全体の将来性については問題がないにしても、それが業界内のすべての分野においてそうかといえば、残念ながらそうとは言えません。
かつては需要が多かったけれども今では案件が減ってしまっている技術やプログラミング言語がいくつもあります。
ここでは、今ある業界内の分野の中から、将来性のありそうなものをいくつか選んで紹介します。ただし、非常に移り変わりが激しく、複雑な業界のことですから、そもそも将来の予測は困難であるという点にはご注意ください。
Web
Webはもはや、巨大なインフラです。産業も生活も、Webなしでは考えられません。この分野が衰退することは、まずないと考えてよいでしょう。
Webという分野自体が巨大な産業で、その中にさらに様々な分野を含んでいます。サーバーサイド、フロントエンド、セキュリティーなど、それぞれに専門家がいます。仕事はいくらでもあります。
ただし、非常にトレンドの移り変わりがはやい分野であることも確かで、新技術に常に目を光らせておく必要があります。
Webプログラミングについてはこちらの記事で詳しく紹介していますので、Webに興味のある方はぜひこちらもチェックしてみてください!
AI
機械学習によっていろいろなことができるようになったAIは、すでに私達の生活に入り込んでいます。AI技術者は、今後ますます社会に必要とされることになるでしょう。
ビジネスにおいても、AIによる効率化や経営判断が巨大な利益をもたらす可能性があります。優秀なAIエンジニアは、のどから手が出るほど欲しい人材であるはずです。
データサイエンス
コンピューターの普及とWebの拡大により、膨大なデータが得られるようになりました。そのデータを活用するための方法の総称が、データサイエンスです。
データサイエンティストには、統計学、データクレンジング、データベース、AIなど、様々なスキルが要求されます。その分ハイスペックな人材として、高収入も期待できます。
組み込み
パソコンやスマホなど、明らかにコンピューターとわかるもの以外にも、様々な機械にコンピューターは組み込まれています。「スマート家電」と呼ばれる、インターネットやAIの活用でより便利になった家電をはじめ、産業用の機械などでも、内蔵コンピューターによる制御は不可欠です。
それらの機械ひとつひとつにプログラムが仕込まれていることを考えれば、この分野の需要がいかに巨大であるかが分かります。
また、こちらの記事では、需要の大きなプログラミング言語などをまとめています!将来性の高い分野やスキルについて詳しく知りたい方は併せて確認してみてください。
将来性のある人材
個々のエンジニアの立場に立ってみれば、将来性といったときに一番重要なのは、エンジニア自身が将来性のある人材であるかどうかです。業界全体に将来性があったとしても、それと自分自身に将来性があるかは別問題です。
エンジニアの将来性を測る材料はただひとつ、「スキル」です。スキルのある人には、将来性があります。ただし、そのスキルは現在持っているスキルだけでなく、これから獲得できるスキルも含まれます。
こういうことを踏まえると、将来性のあるエンジニアとは以下のような人であると考えられます。
将来性のあるスキルを持っている
今現在、需要の多いスキルを持っていることは大きな強みになります。そしてそのスキルに将来性があれば、そのエンジニアの将来は大いに有望ということになります。
上に挙げたような分野も含め、将来性のある分野のエキスパートになることが、末永く業界に留まるためには重要になってきます。
コミュニケーション能力が高い
IT業界の移り変わりは激しく、今は隆盛を極めている技術分野も、もしかしたらやがて下火になるかもしれません。ある日突然現れた新技術に、それまでの技術が取って代わられるということもしばしば起きます。このあたりは、運としか言いようがありません。
しかし、そういう時代の流れに左右されない、普遍的なスキルも存在します。そういうスキルを持っている人は、将来が明るいと言えます。その筆頭が、コミュニケーション能力です。
開発業務は、通常、たくさんの人が関わって行います。チームの一員となって働くためには、相手の言うことをよく理解し、自分の伝えたいことをちゃんと理解してもらう能力が極めて重要です。ただむっつりと、コーディングだけしていればいいわけではないのです。
対面で話すことはもちろん、リモートでのやりとりも多いですから、それぞれの状況に応じたコミュニケーションを取る必要があります。メールやテキストメッセージなどの文章も、分かりやすく、誤解のないように書くことによって仕事をスムーズに運ぶことができます。
現場での立場が上になればなるほど多くの人と接することになりますので、「将来有望」と目されるためには、コミュニケーションスキルが必須と言えます。
勉強をする意欲が衰えない
今現在「最先端」と言われている技術でも、時がたつにつれそうではなくなっていきます。あるプログラミング言語が、世界中で普及し一時期かなりもてはやされたものの、やがて衰退し、学ぶ人も少なくなる、という現象は、避けられない現実としてあります。
そういうことが起きたときに、その言語と共に自分も業界から消えていく、というようなことは避けなければなりません。そうなる前に、新たな言語を学ぶなどして時代の変化に備えることが大事なのです。
つまり、学び続けなければエンジニアとして生き残っていくことはできません。学び続ける能力こそが、エンジニアの将来性のかなりの部分を占めると言ってよいでしょう。
現在持っているスキルだけでは、常に、足りません。学ぼうにも学びようがない技術もあるからです。それは、まだこの世にない技術です。どんなものかは分かりませんが、今ある技術に取って代わるような何かが現れたなら、意欲的にそれをものにする、そういう姿勢が必要です。
将来性のある人材になるために
それでは、将来性のあるエンジニアになるためには、どうしたらいいのでしょう。唯一の方法は「学び続ける」ことです。
もちろん、これから需要が増えそうな技術を見極める能力も大事ですが、それは、技術習得のために学んでこそ有効になるのです。
学ぶ方向としては、スキルを「深める」「広げる」、そして「変化に対応する」というものが考えられます。
スキルアップを続ける
今持っている技術をさらに深め、より高いレベルへと引き上げる努力を続けましょう。例えばデータベースの操作や運用の技術を身につけたら、次は設計や実装の技術を学ぶ、というふうにです。
同じところに留まっていては、周りの人や時代に置いて行かれてしまいます。スキルレベルを高め続けてようやく、周りに追いついていけるのです。
スキルの手駒を増やす
ひとつの分野で技術を深めていくのと同時に、その隣接分野や他の分野へも学びの幅を広げていきましょう。
一番分かりやすいのは、使える言語を増やすことです。ある言語で案件が減ってしまったとしても、別の言語で受注を増やせる、という体制を整えておくのです。いわばセーフティーネットを広げるわけです。
プログラミング言語は互いに似たところがありますので、ひとつ学べば次からは格段に学びやすくなります。「オブジェクト指向」など、いろいろな言語に共通する汎用的な概念を理解しましょう。
変化を恐れない
ITは、世の中にすさまじい変化をもたらしました。一人一人が電話機兼小型コンピューターを持ち歩き、人と人が、世界中どこにいても瞬時にさほどのお金もかからずつながることができる。50年前の人が聞いたら夢物語と思うようなことが現実になっています。
その通信網を利用した様々なサービスが生み出されました。巨万の富を生んだものもあれば、消え去ったものもあります。人々の生活様式をがらりと変えたものも多々あります。
このような大変革を先導するIT業界は、当然変化の激しい世界です。そこに属するエンジニアが、変化を恐れていては何もできません。使う技術や仕事のやり方そのものが、ある日を境に完全に別のものに変わることもあるわけですから。
結局、エンジニアが日々勉強に励むのは変化を恐れないためだと言うことができます。新技術を素早く吸収するため、あるいは変化が起きてもびくともしない普遍的なスキルを身につけるため、です。エンジニアの将来性とは、ひとことで言うなら「変化への対応能力」ということになります。
むしろ、自ら変化を起こしてやるんだ、くらいの気持ちを持っておきたいものです。自分の書くコードの一行一行が、業界の、社会の変化に寄与しているのだ、と自覚を持つことができれば、変化は歓迎すべきものであるとさえ思えるでしょう。
自分が「エンジニアに向いているのか」や「プログラミングに適性があるのか」と心配になっている方は、こちらの記事にプログラミング習得に向いている人の特徴をまとめていますので、自分にどれくらい当てはまるか確認してみるのはいかがでしょうか。
まとめ
IT業界が本質的に持っている「変化」をするという性質が、エンジニアに将来に対する不安を抱かせるひとつの要因になっています。技術のトレンドに乗るために勉強するなど、大変なこともありますが、変化があるうちはまだまだ業界の将来は安泰だと思って、変化を楽しめるようになりましょう。