近年、社会のIT化はますます進み、IT系の企業だけではなく、一般の企業でも、様々な業務にITを活用しています。
それにつれて、企業や大学もさらに情報教育に力を入れています。IT知識は、もはや必要不可欠な時代となりました。
みなさんも、IT学習の重要性はよくお分かりだと思います。
これから就職活動を始める学生さんや、転職を考えている社会人の方も、そうしたIT知識を、企業に自分を売り込むための武器にできたらな、と感じているのではないでしょうか。「自分はITに強い」と自信をもって言えるのは、大きなアドバンテージとなるでしょう。
しかし、具体的に「ITに強い」というのはどういったことを指すのでしょうか。プログラミングがバリバリできたり、複雑なソフトウェアを運用したり、いま流行りのAIやビッグデータに詳しかったり……。そういったことを想像するかもしれません。
そこまでいかずとも、日常の業務に生かせる『IT力』、言いかえれば、「企業の求めるIT知識」を身につけたいと考える人は多いかと思います。
しかし、具体的な目標が無いままでは、なかなか勉強もやりづらいのではないでしょうか。
そこでうってつけなのが「ITパスポート」です。ITパスポートはまさに、企業の求めるレベルの『IT力』があることを示すのに最適な資格です。
「でも自分は文系だから……」と、ためらってしまうかもしれません。
このページでは、注目度の増す「ITパスポート」という資格について解説していきます。
ITパスポートは、決して難しい資格ではありません。しっかりと勉強をすれば、誰でも合格できます。まずは、試験について知るのが大切です。
- 「そもそもITパスポートって?」
- 「どれくらい難しい試験なのだろう」
- 「理系科目が苦手でも合格できるのかな」
- 「本当に就職・転職でのアピールポイントになるのだろうか」
そういったことを一緒にみていきましょう。
ITパスポートとは
ITパスポートは、独立行政法人情報処理推進機構によって2009年に開始された、その人の『IT力』を計るための試験です。
『IT力』とは、現在の社会で備えておくべきITに関する幅広い知識を有しており、それを業務において有効に活用できる能力のことをいいます。
2009年の開始以来、ITパスポートの受験者は増え続け、令和2年度には124万人が受験しています。受験者のうち66%が社会人で、そのうち67%が非IT系の仕事に就いています。
(参照:https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/result.html)
受験者の内訳からも、ITパスポートは、非IT系の人たちにも広く開かれた試験だということがわかります。
現在、文系・理系問わず、業務にITの知識・技能は不可欠であり、ITに強い人材の育成に注力する企業も多く、必然的にそうした知識・技能が求められます。その際の公平で明快な指標として、ITパスポートは様々な場面で活用されています。
ITパスポート試験の概要
ITパスポートは、47都道府県で毎月実施されています。
受験申込は、公式サイトで利用者IDを登録して、すべてWeb上で行います。支払い方法によっては、試験前日の正午まで申込を受け付けています。なので、スケジュールをたてやすく、また、一度不合格になってしまっても、翌月には再受験できます。
受験申込に資格は必要なく、誰でも受験することができます。
こうした敷居の低さも、ITパスポートの魅力の一つです。
受験料は、令和4年4月から7,500円となっています。
試験時間は120分、4択問題が全部で100問出題されます。
試験内容は、
- ストラテジ系 35問程度
- マネジメント系 20問程度
- テクノロジ系 45問程度
の3つの分野に分かれています。
各分野の内容をもう少し詳しく説明すると、
- ストラテジ系(経営全般:企業と法務/経営戦略/システム戦略)
- マネジメント系(IT管理:開発技術/プロジェクトマネジメント/サービスマネジメント)
- テクノロジ系(IT技術:基礎理論/コンピュータシステム/技術要素)
となっています。
(参照:https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/range.html)
上記の3分野それぞれが1,000点満点で、3分野とも300点以上を獲得し、かつ、総合評価で600点以上を獲得すると、合格となります。
細かい出題内容は、変化の激しいITの世界に合わせて、こまめにアップデートされています。公式サイト等で最新の情報を確認してください。(※令和4年3月までの試験には「試験要綱Ver.4.6」が、令和4年4月からの試験には「試験要綱Ver.4.7」が適用されます。)
採点には、IRT(Item Response Theory)という、まぐれ当たりを判定し排除する理論・方式が採用されています。この方式によって、受験者の確かな知識を計ることが可能なのです。
試験はコンピュータを用いて行われます。コンピュータの画面に表示された問題に対して、マウスとキーボードを使って解答します。こういった試験方式を、CBT(Computer Based Testing)方式と呼びます。
CBT方式の試験に不安がある人は、公式サイトで疑似体験できるソフトが配布されていますので、利用してみてください。
ITパスポートの難易度
では、ITパスポートはどれくらいの難易度なのでしょうか?
人それぞれ得意不得意はありますし、事前に持っている知識量も違います。
ここでは、問題の難易度に加えて、どういった人たちが合格しているのかを見ていきましょう。
まず試験内容ですが、ITパスポートでは、実際にプログラミングをすることはなく、複雑な計算も要求されません。「プログラミングはさっぱり」「数学は苦手だ」という人でも問題ありません。
つぎにITパスポートの合格率です。
ITパスポートの合格率は、令和3年4月度〜令和3年9月度で、55.8%と2人に1人以上が合格しています。社会人に限ると、合格率は上がり、61.0%の方が合格しています。
(参照:https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/openinfo/pdf/statistics/202109_ip_shikenkekka.pdf)
先に見たように、受験者は非IT系が多いので、あなたが理系科目が苦手だとしても、しっかりと勉強して知識をつければ、難なく合格することができます。
ITパスポートは、特別な専門資格ではなく、誰にでも取得することのできる資格だということが分かりますね。
ITパスポートを取得するメリット
そもそも、ITパスポートを取得することには、具体的にどういったメリットがあるのでしょうか。合格したところで役に立たなければ、受験する意味がありませんよね。
国家資格であること
ITパスポートは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、経済産業省が実施する国家資格です。つまり、あなたの『IT力』に国家からお墨付きが与えられるのです。
世界的な情報化の流れに乗るために、国家としてIT技術の向上に尽力しているのです。
就職や転職の際にもアピールできる
ITパスポートは国家資格ですので、就職活動や転職活動で大きなアドバンテージとなります。企業もITに明るい人材が欲しいのです。
ITパスポートの公式サイトでは、企業での活用事例が掲載されています。
(参照:https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/example.html)
一例として、
- オリックス生命保険株式会社
- キヤノンマーケティングジャパン株式会社
- KDDI株式会社
- 日本電気株式会社(NEC)
- パナソニック株式会社
などの大企業が新卒採用に活用(エントリーシートへの記入を要求)しており、
- 株式会社朝日新聞社
- 株式会社大塚商会
- au損害保険株式会社
などでは、社員への取得を推奨・奨励しています。
また、ITパスポートでは、ITに関する知識だけでなく、経営戦略、マーケティング、財務、法務などの知識も問われます。ですので、ITパスポートの勉強をすることによって、それらの知識が身に付き、ビジネスマンとしてスキルアップすることができます。
このように、ITパスポートは、IT知識に加え、企業の一員として活躍するための知識を持つことが証明できる、強力で有効な資格といえます。
これから就職活動を始める学生さんや、転職を考えている社会人の方は、ITパスポートを取得することによって、「自分はITに強い」と胸を張って言えるようになります。
ITの知識を付けることができる
現代はITと切っても切り離せない時代です。いくつものソフトを使用しての業務は、いまや当たり前のものです。また、社員とのコミュニケーションにも、チャットツールなどを用いることが増えています。
ITパスポートの勉強を通して、そうしたIT全般の知識を身につけることができます。
公式サイトでは、ITパスポートの試験内容を、
具体的には、新しい技術(AI、ビッグデータ、IoT など)や新しい手法(アジャイルなど)の概要に関する知識をはじめ、経営全般(経営戦略、マーケティング、財務、法務など)の知識、IT(セキュリティ、ネットワークなど)の知識、プロジェクトマネジメントの知識など幅広い分野の総合的知識を問う試験です。
【ITパスポート試験】iパスとは
と説明しています。つまり、ここに書かれている知識があなたのものになるのです。
また、ITパスポートでは、IT技術の知識だけでなく、企業の一員として欠かせない情報リテラシーを学ぶことができます。
情報リテラシーがないと、業務やコミュニケーションに支障が出るだけではなく、様々なリスクにさらされます。
例えば、
- 機密情報や個人情報の漏洩
- コンピュータウイルスへの感染
- 企業情報などの不適切な利用
などの、企業コンプライアンスに関わる問題に直面するリスクがあります。
さらに、最近では、新型コロナウイルスによる感染拡大防止の観点から、テレワークを実施する企業も増えました。すでに通常の業務へ戻った企業もありますが、一方で、このままテレワークを続行する、あるいは、テレワークと会社での業務を並行して実施するという方針の企業も増えています。
おそらく、テレワークという業務形態は、今後よりいっそう身近になっていくでしょう。
テレワークが拡大すると、「自宅でコンピュータを使って仕事をする」というのが、当たり前のことになります。
このとき、『IT力』があれば、Zoomで社内会議をしたり、Slack上で業務を進め、コミュニケーションを取るなどの、ビジネス用アプリを用いた業務に戸惑わず、スムーズに仕事を進めることができるでしょう。
つまり、企業の一員として、『IT力』が必須の時代なのです。
基本情報処理技術者などの資格の足固めになる
本記事をご覧になっている人の中には、より高いITレベルを求めている方もいらっしゃるかもしれません。
ITパスポートを実施している情報処理推進機構は、他にも様々な試験を行っています。中でも「基本情報処理技術者試験」はITパスポートに次ぐ注目度のある試験で、IT系企業で仕事をするのに必須ともいえる資格です。
これまでプログラミング等のIT技術に全く触れてこなかった人が、いきなり基本情報処理技術者試験の勉強をするというのは、少し難しいのではないかと思います。
そこで、まずはITパスポートの勉強をして、合格したら基本情報処理技術者試験へと進むことで、現実的な成長が可能です。
ITパスポートで勉強したことが、基本情報処理技術者試験へとステップアップするための足がかりとなるのです。
そして、基本情報処理試験の上位には応用情報処理技術者試験があり、さらに専門分野ごとの試験も用意されています。ITパスポートは、情報処理の世界への入り口なのです。
ITパスポート試験をきっかけに、スキルアップを目指してみてください。
ITパスポートの勉強方法
ここではITパスポートの基本的な勉強方法について解説します。
といっても、特別なことは必要なく、他の資格や、学校の試験勉強と大きく変わりません。
参考書
受験者数が多く、注目度の高い資格ですので、参考書も多数出版されています。ご自身のレベルや好みに合わせて選んでみてください。
選ぶときのポイントは、トピックごとに小分けにされているもの、そして確認問題がついているものを選ぶと良いでしょう。ITパスポートは出題範囲が広い試験なので、スケジュールやライフスタイルに合わせて、勉強を進めやすい、自分に合った参考書を探してみてください。
通信講座
ITパスポートは、ITについてまったくの初心者であっても、独学で十分合格できます。
しかし、
- 「参考書に書いてあることがどうしても理解できない」
- 「独りで計画を立てて勉強するのは苦手だ」
- 「疑問に思ったことをすぐに解決したい」
という人は、オンラインでの通信講座の利用を検討してみてください。
過去問
過去に出題された問題と解答は公式サイトで公開されています。(https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/openinfo/questions.html)
また、過去問に詳細な解説をつけた問題集も出版されています。
試験本番と同じように、時間を計って解いてみてください。
動画サイトなどで情報を得る
Youtubeでも、ITパスポートの試験内容を解説、講義する動画が多数投稿されています。参考書と比べてより視覚的で、お金もかからないので、利用してみるのもいいかもしれません。
なかなかまとまった時間が作れない人は、動画サイトや電子書籍の参考書を使って、通勤・通学の時間をいかしましょう。
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本ページでは、注目度の増すITパスポートという資格について、試験の概要、具体的な出題内容、取得するメリット、勉強方法について解説していきました。
高度情報社会といわれる現代において、『IT力』は欠かせないものです。しかし、「ITに強い」と言える人は、まだまだ少ないのが現状です。なので、企業も、ITに強い人材の育成に力を入れていますし、就職・転職でもそういった人材を求めています。
そんな中で、ITパスポートという国家資格を持っているということは、強力なアドバンテージとなります。
本ページが、みなさんのステップアップにお役立て出来たら幸いです。
・参考サイト
【ITパスポート試験】情報処理推進機構 – IPA