Webエンジニアの将来性を心配する声が、時々聞こえてきます。
今はいいかも知れないが、将来もこの状態が続くのか?そうした疑問を持つ方もいることでしょう。
もちろん、未来は誰にもわかりません。何事も、未来についてはっきり断言することはできません。けれども、Webエンジニアの将来については、現状分析をすればある程度のことはわかります。
この記事の目的は、Webエンジニアの将来性についての不安をズバリ解消することです。安心して最後までお読みください。
Web業界の現在
Webエンジニアの将来性を考えるためには、まず現状を把握することが大切です。
とはいえ、その「現状」が、激しく変化しているのがWebの世界です。少し目を離すと大きく変わっていて、ついていくのが大変になります。
ここでは、そういう移ろいやすい現状ではなく、比較的継続性の高い状況を取り上げます。
常に人材不足
IT業界は、慢性的に人手不足です。需要が多い、すなわち仕事量が多いにもかかわらず、それに見合う人材がなかなか確保できない、という状況が、あちこちで起きています。人材不足はかなり深刻です。
IT業界の一部であるWebの世界でも、やはり人材は不足気味です。ただし、Web業界はまだましなほうと言えるかもしれません。本当に深刻なのは、AIなどの、高度な技術力を要する分野です。
Webエンジニアになるためには様々なスキルが必要ですが、使用するプログラミング言語は比較的学びやすいものが多く、参入するのはさほど難しいことではありません。だからといって人が余っているわけでもありません。
WebサイトやWebアプリを作成する需要は高い状態が続いています。ここ何年もの間、新規に設立される法人の数は10万を上回っています。そのほんの一部がWebサイトの作成を外注するだけでも、かなりの数のエンジニアが必要となります。
ちゃんとしたスキルのあるWebエンジニアならば、仕事がなくなるということは考えにくいのが現状です。
盛んな人材養成
IT業界の深刻な人手不足に対し、国も傍観しているわけではありません。人材養成に本格的に乗り出しています。その目玉となるのが、学校でのプログラミング必修化です。
何が足りないかというと、やはりプログラミングができる人が圧倒的に足りないのです。プログラミング必修化は、その危機感の表れと言えるでしょう。ただ、学校現場はプログラミングを教えられる教員の鶴圃に四苦八苦している様子で、人材不足解消にどの程度役に立つのかはまだわかりません。
一方、プログラミングを専門に教えるスクールは花盛りの状態です。未経験からエンジニアを目指す、というコンセプトのプログラミングスクールも多く、そういうところでWeb開発者になるための勉強をしている人もたくさんいます。
こちらの記事で、プログラミングスクールについて詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
次々に生まれる新技術
Webの世界では、新技術が次々と生み出されてきました。
例えば、Web技術の中でも最も基本的なものと言えるHTMLは、時代と共に様々な仕様を取り入れてきました。現在のHTML5では、Webページに動画や音声を簡単に埋め込めるなど、豊かな表現ができるようになっています。
その一方で、FlashやSilverlightといったブラウザ上にコンテンツを表示するための規格は、消えていっています。
また、現在では、Webサイトの制作の手間を軽減することのできるフレームワークによる開発が盛んです。これは、2005年ごろに出てきたRuby on Railsというフレームワークが起点となった流れです。ひとつの画期的な技術が、時代を変えた例です。
個別の技術のはやり廃りは今後も起きていくでしょうが、「変化し続ける」というWebの世界の性質は、今後も変わらないでしょう。
Webエンジニアの主な仕事
Webエンジニアの主な仕事は、WebサイトやWebアプリを作ることです。その中でも、サイトの骨格・構造にあたる部分をHTML&CSSや各種プログラミング言語を使って構築していきます。サイトやアプリに表示されるコンテンツは、別のクリエーターが作ります。
例えるなら、建物を建てるのに似ています。「お店」としてのWebサイトを作るのがWebエンジニアで、そこに商品を並べてるのはまた別の人達、というような感じです。お店で働く人達や訪れるお客様が快適に過ごせるような空間を作る、という責務がWebエンジニアにはあります。
Webエンジニアは、主に2つのタイプに分かれます。「フロントエンド・エンジニア」と「バックエンド・エンジニア」です。フロントエンドは、ユーザーの目に触れる部分、バックエンドは直接は目に触れない部分を作ります。
また、WebサイトやWebアプリの保守業務も、Webエンジニアの大事な仕事です。Webサイト・アプリに何か不具合があったら、「修繕」する必要があります。また、サイトやアプリも時代やニーズに合わせて「リフォーム」する必要があります。一度作ったら終わりではなく、絶えず手を入れていくものなのです。
Webエンジニアの将来性
Webエンジニアに将来性があるのか、というのはしばしば話題になることです。
結論を言えば、職業としてのWebエンジニアには「将来性はある」と言えます。ただし、個々のWebエンジニア全ての将来性までは保証できません。それは、どのような職業であっても同じことです。
一方、Webエンジニアに将来性がない、と考えている人もいます。その根拠としては、需要がそのうち枯渇する、またはWebエンジニアが増えすぎて供給過多になるというものがあります。
以下では、それらにひとつひとつ反論を試みます。
需要はこの先も十分ある
Webサイト・アプリの構築需要は、そう簡単にはなくなりません。理屈の上では、全ての組織や個人事業主がWebサイト・アプリを作ってしまったら、新規の案件はなくなる、ということになりますが、現実にはそうはなりません。
上でも述べましたが、近年は年間に10万以上の法人が新規に設立されています。もしそれらが全て、広報や販売のためのWebサイトを立ち上げたら、人手などいくらあっても足りないでしょう。実際にサイトを立ち上げるのがその一部だとしても、需要はとても多いと言えます。
さらに、保守案件も枯渇する心配はありません。現在すでに存在するWebサイト・アプリが相当あるからです。その数は、日本国内だけでも数千万とも言われています。企業サイトがそのうちのごく一部だったとしても、それらを維持する仕事は膨大に発生していると考えられます。
要求される技術は変化する
Web開発の業界へは、比較的身につけやすいスキルセットで入ることができるので、やがて人が余るという議論があります。それに対しては、「要求される技術が変化し続けるから大丈夫」とお答えしておきます。
確かに、Webエンジニアとして必要とされるスキル、例えばHTML&CSSやJavaScript、PHPなどは、IT関連のスキルの中では比較的簡単に身につけられるほうだと言えます。
けれども、常に変化し続けるというWebの世界の性質上、仕事を続ける上では常に新しいことを吸収し続ける必要があります。それは決して易しいとではありません。時代の変化に対応できる、学び続けることのできる人材は貴重であり、余ることはないでしょう。
将来性のあるWebエンジニアになるために
Web開発業界全体には将来性が十分ありますが、個々のWebエンジニア全てに将来性があるとは限りません。将来性のある人材になるための努力が必要ということです。
それでは、どういう努力をすればいいのでしょうか。方向性は2つです。ひとつは、現在の需要に応えられるしっかりとしたスキルを身につけることです。そしてもうひとつは、将来発生するであろう需要に応えるべく新たなスキルを吸収し続けることです。
Webエンジニアとしての基礎を固める
将来のことを考える前に、現在必要な基礎をしっかり固めましょう。目先の仕事がちゃんとこなせないのに、将来を考えることはあまり意味がありません。
ただし、現在主流となっている技術を身につけることは、将来性を考える上でも大きなプラスになります。なぜなら、以下に述べるような、現在のWeb開発において必須の技術は、これから先も長い間、必要とされるはずだからです。
HTML & CSS、JavaScript
Webエンジニアにとって、HTMLやCSSは、空気や水のようなものです。それ無しでは生きていけません。プロとして恥ずかしくない、十分な習熟が必要です。
フロントエンドのエンジニアを目指すなら、JavaScriptも使いこなせる必要があります。見栄えのする、凝ったユーザーインターフェースを作ったりするのに使われる言語です。
HTML&CSS、そしてJavaScriptは、比較的身につけやすく、デザイナーなど他の職種の人でも使いこなせる人はいます。従って、エンジニアを目指すなら、そういう人達を上回る習熟度が必要になってきます。
LAMP
サーバーサイドでよく使われる技術の組み合わせとして、LAMPというものがあります。
LAMPとは、OSのLinux、WebサーバーのApache、データベース管理システムのMySQLまたはMariaDB、プログラミング言語のPHP、Python、Perlの頭文字を取ったものです。
これら全てについて十分習熟すれば、間違いなく「使える」サーバーサイドエンジニアになることができるでしょう。ただ、いきなり全てを学ぶのは大変なので、手始めに、サーバーサイドで圧倒的なシェアを持ち、しかも学びやすい言語であるPHPを勉強するのがよい選択と言えます。
PhPはサーバーサイド開発に特化した言語なので、それを学ぶ過程で自然とサーバーやデータベースに触れることになります。いろいろな意味で、コストパフォーマンスの高い言語なのです。
LAMPはすでに定着した技術の集まりなので、今後もそう簡単にはその地位は揺らがないでしょう。ただし、それぞれの技術に浮き沈みはあります。例えば、以前は隆盛を極めていたプログラミング言語のPerlは、現在では弱体化しています。
変化に備える
しっかりとした基礎が固まり、仕事が順調にこなせるようになったら、将来に向けてスキルアップを図るときです。
とはいえ、次に何を学習するか、というのはとても難しい選択になります。有望そうな技術が山ほどあるからです。
ここでは、Webエンジニアが身につければ将来性をアップするのに役立ちそうな技術をいくつかピックアップして紹介します。ただし、これらが10年、20年先にも通用するかは、はっきり言ってわかりません。それでも、新しい技術を知ることで、たとえ直接仕事に結びつかなくてもエンジニアとしての厚みが増すという効果は期待できます。
クラウド
「クラウド」は、もはや日常語と言ってもいいでしょう。データをクラウドに保存しておいて、複数の端末で参照するということが当たり前にできるようになりました。
企業にも、自前のサーバーを立てる代わりにクラウド上にシステムを構築する動きが出ています。
これからますます、クラウドに強いWebエンジニアが求められることになっていくでしょう。
ブロックチェーン
ビットコイン等の暗号通貨を支える技術であるブロックチェーンも、注目されています。
ブロックチェーンとは、サーバーで一元管理されるのではなく、たくさんのコンピューターで分散管理されるデータベースです。
元々は、暗号通貨であるビットコインを実現するために開発された技術ですが、今後様々な分野に応用が広がっていくと予想されています。ブロックチェーンの技術について学べば、Webエンジニアとしてそれらの応用分野に携われる可能性が出てきます。
AI
AI(人工知能)は、すでに生活に溶け込んできている感があります。商品のお勧めや写真販売サービスの顔認証など、機械学習の成果を使ったWebアプリが多数存在します。
Webエンジニアも、AIの基礎を学んでおけば、今後、仕事の幅が広がるでしょう。
プラスαのスキルを獲得する
技術的なスキル以外の、様々なスキルを身につけておくと、対応できる仕事の範囲が広がります。
Webサイト・アプリの主要な目的である「人を集める」ための知識は、Web開発に携わるならば、基礎教養として身につけたいところです。
Webマーケティング
Webマーケティングとは、Web上の集客や販売をアップするための活動のことです。何らかの調査をして、客に好まれるサイトに作り替える、というようなことも含まれます。
SEO
SEOは、ネット検索の順位を上げるための様々なノウハウのことです。サイトの表示速度を上げるなどの、エンジニアが携わるべき対策も含まれています。それだけに留まらず、いかに有益なコンテンツを作るか、ということも含めて知識を深めておくのは、とても有意義です。
デザイン
見た目や使い勝手は、集客に大きく影響します。デザインは、サイトの運命を左右するといっても過言ではありません。Webエンジニアがデザインもできれば、フロントエンドのほとんどをカバーすることができて、非常に重宝されるでしょう。
まとめ
Webエンジニアに、将来性はあります。不安を煽るような言説に惑わされず、堂々と進んでください。ただし、常に学習を続け、時代の変化に強いエンジニアになることが重要です。