エンジニアを目指す皆さんにとって、エンジニアという職業のやりがいや社会的な意義というのは大いに関心があることでしょう。けれども、一番の関心事は「年収」かも知れません。
この記事では、エンジニアの年収がどうやって決まるか、ということを解説します。さらには、年収アップの方法についても考えます。
どうせエンジニアになるのなら、高収入なエンジニアを目指しましょう。
エンジニアの年収は「スキルに付く値段」
転職サイトの「あなたの年収診断します」というようなサービスをご覧になったことはありますでしょうか。エンジニアとしてのスキルや経験を入力すると、適正な年収を教えてくれるというものです。
このサービスから分かるように、エンジニアの年収とは、簡単に言えば「スキルに付く値段」ということになります。貴重なスキルの持ち主なら高額所得も夢ではありません。逆に、平凡なスキルしか持っていなければ、言い方は悪いですが安く買いたたかれてしまうこともあるかもしれません。
スキルの需要と供給
エンジニアの年収に大きな影響を与えるのが、スキルの需要と供給です。どういうことか、順を追って説明しましょう。
モノの値段は、主に需要と供給で決まります。多くの人が求めていて数が少ないとき、値段は上がります。求める人が少なくて数が多いとき、値段は下がります。需要が多く供給が少なければ値は上がり、需要が少なく供給が多ければ値は下がります。
この法則は、働く人に支払われる報酬にも当てはまります。ある業界で人手不足なら、雇い手は賃金を上げてでも雇いたくなるでしょう。逆に、不景気などで働き手が余っているような状況なら、賃金は低下傾向になります。もちろん、労働者は法律で保護されていますから、そう簡単に賃金カットはされないわけですが。
エンジニアという専門職の場合、その人の持っているスキルが収入決定の大きな要因になります。多くの企業が求めているスキル、しかも身につけるのが難しく、持っている人が少ないスキルには、高い値がつく傾向があります。
逆に、多くの人が持っているようなスキルしかなければ、収入はあまり上がらないかもしれません。ただし、そのスキルを持つ人の数が多くても、それを上回るほどの大きな需要があるのであれば、十分な高収入も期待できます。
エンジニアとして高収入を目指すのなら、「需要が多い」「供給が少ない」の両方を満たすスキルの獲得を目指すのが基本です。ただし、それはハードルが高いというなら、少なくともどちらか一方を満たすスキル獲得を目指しましょう。とくに「需要が多いスキル」は持っていると安心です。
高収入を目指せるスキル
それでは、需要が多く供給が少ない、高収入を目指せるスキルとはどんなものでしょうか。今でいうと、AIやデータ分析が熱い注目を集めています。
それらは、単独のスキルというよりは複数のスキルの組み合わせです。プログラミングなどコンピューター関連のスキルに加えて、数学的な素養も要求されます。
AI
AI(人工知能)に関するスキルを持ったエンジニアは、とても需要が大きく、これからも伸びていくことが期待されます。一方、AIエンジニアになるためには様々なスキルを併せ持つ必要があるため、人材は貴重です。
AIエンジニアに必要なスキルは、機械学習、数学(統計学、微分積分、線形代数)、データベースなどです。プログラミングはできて当然という感じで、よく使われる言語はPythonやRです。
AIとプログラミングの関係性についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。「AIにプログラミングは自動化されるのか」など、Aiに興味のある方なら気になる情報が詰まっていますので、ぜひ読んでみてください!
データサイエンス
データサイエンスの主な仕事は、データから情報を引き出すことです。企業においては、利益を引き出すような情報を求められることになるでしょう。現在、多くの企業には大量のデータが眠っているため、それを活用できるデータサイエンティストは高額の給料を支払ってでも雇いたい人材のはずです。
データサイエンティストに必要なスキルは、プログラミングやデータベースの知識は当然として、統計学や線形代数などの数学の知識、データを分析できる形に整えるデータクレンジングの技術など多岐にわたります。AIによる分析も盛んですから、そちらのスキルも持っていれば、かなりの高収入も期待できるでしょう。
また、こちらの記事で需要の高いプログラミング言語などをまとめています。これから学習する人にとって、これからの学習の参考になると思うので一読してみてください。
社員エンジニアの年収
さて、エンジニアの年収は、具体的にどれくらいなのでしょうか。政府が発表している「賃金構造基本統計調査」によれば、「システム・エンジニア」の平均年収は2019年の時点で568.9万円です。これは勤めて賃金をもらっている社員エンジニアの場合ということになります。
この統計には129の業種が挙げられていますが、システム・エンジニアはそのうちの19番目です。中央値が422.3万円ですから、かなり高収入な仕事と言ってよいでしょう。
ただし、同じエンジニアでも様々な要因によって年収は違ってきます。
年収を決める要因
社員エンジニアの年収を決める主な要因には、スキルレベル、職種、会社の規模などがあります。その他にも勤続年数など様々なものがありますが、個々ではこの3つに絞って解説します。
スキルレベル
当然ながら、スキルが高いほうが年収は高くなる傾向があります。経済産業省が2017年に発表した「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」では、エンジニアのスキルを7つのレベルに分け、それぞれのレベルにおける平均年収を出しています。
スキル標準レベル別の年収の平均
レベル1 | 新人・初級者レベル | 437.8万円 |
レベル2 | 上位者の指導の下に仕事ができる若手人材レベル | 499.2万円 |
レベル3 | 独立して仕事ができる中権人材レベル | 567.0万円 |
レベル4 | 部下を指導できるチームリーダーレベル | 726.1万円 |
レベル5 | 社内での指導者・幹部レベル | 937.8万円 |
レベル6/レベル7 | 国内で著名なレベル/国際的に著名なレベル | 1129.9万円 |
レベルが上がるに従って年収も上がっていますが、特にレベル4以降の上がり方が急です。ただし、国内外で「著名なレベル」になるなど、そのハードルは高くなっています。
職種
職種も、エンジニアの年収に大きな影響を与えます。上記の調査からいくつか例を挙げれば、次のようになります。
プロジェクトマネージャ | 891.5万円 |
高度SE・ITエンジニア(基盤設計担当・ITアーキテクト) | 778.2万円 |
SE・プログラマ(顧客向けシステムの開発・実装) | 593.7万円 |
プロジェクトを統括したり設計したりする立場の人は収入が高く、コードの実装を担当する職種ではそれよりは低くなる傾向があります。
プログラミングを使う仕事はこちらの記事にまとめていますので、これらの他にもどんな職業があるのか気になった方はぜひご覧ください!
会社の規模
会社の規模も年収の差を生む要因です。上記「賃金構造基本統計調査」によれば、会社の機緒別でシステム・エンジニアの年収を比較すると以下の通りです。
10~99人 | 536.9万円 |
100~999人 | 532.2万円 |
1000人以上 | 627.2万円 |
10人以上999人までの規模の会社と、1000人以上の規模の会社では、明らかに1000人以上のほうが年収が高くなっています。
社員エンジニアの年収の上げ方
上に見たように、様々な要因でエンジニアの年収が変わることが分かります。これから、どのようにすれば年収が上がるかが容易に分かります。
上流工程に携わる
まず、スキル面から見れば、よりスキルレベルが高く、組織内で人を率いることができるならば年収は高くなります。要するに開発業務の上流工程に携わることが高収入への道です。
コーディング技術だけでなく設計などより高度な技術を身につけ、さらに高いレベルのコミュニケーション能力を持つことができれば、設計やマネージメントなどの上流工程に配置される可能性が高まります。
転職する
会社の規模も収入に影響するので、場合によっては転職することも考えるべきかもしれません。その際、従業員数1000人以上の大きな会社を目指すのがいいでしょう。10〜99人規模の会社から100〜999人規模の会社に移ったところで、統計上は年収アップはあまり見込めません。
もちろん、規模が小さくても儲かっている会社はありますし、かなりの将来性を秘めていることもあるでしょう。場合によってはそういう会社に転職するのもアリです。
参考:賃金構造基本統計調査、IT関連産業の給与等に関する実態調査結果
フリーランスエンジニアの年収
フリーランスの年収の求め方は、給与所得者の場合とは違います。
案件ごとに報酬をもらうタイプならば、案件の単価やこなせる案件数によって収入が決まります。
月額など、働いた期間ごとに報酬をもらえる場合は、1ヶ月あたりの報酬と働いた月数によって年収が決まります。
フリーランスエンジニアの年収の具体的な金額については、調査主体によってかなりのバラツキがあり正確な値の把握は困難です。おおむね言えるのは、人によって大きな差があるということです。100万円未満の人も結構いるし1000万円を超える人もまあまあいる、というところだと推測されます。
また、フリーランスエンジニアが何かについてはこちらの記事を参考にしてみてください。
常駐型か在宅型か
どのような形で報酬を得られるかは、主にその案件が「常駐型」か「在宅型」かで違います。
常駐型
企業など開発の現場にエンジニアが実際に足を運んで開発する、というタイプの案件を「常駐型」といいます。常駐型の場合、月給をもらって働くのと近い報酬の支払われ方が多くなっています。月あたりいくらで3ヶ月間、のような形です。
例えば月額報酬が50万円の案件が12ヶ月途切れることなくえられれば、年収は600万円ということになります。
常駐型は案件数が多く、安定した収入に繋がりやすくなっています。
在宅型
在宅型、リモート型の場合、かかった時間に関わらず案件が完了した時に報酬が支払われるという場合が多くなっています。常駐型と違って、平行していくつも案件を受注することも可能です。
やればやるほど報酬が増えるので、仕事がはやい人はかなりの高収入も実現可能です。ただし、常駐型に比べると案件数は少なめで、他のフリーランスとの受注競争に勝つ必要があります。
自分の持っているスキルによっては、供給より需要がずっと少なく、単価が抑えられがち、ということにもなりかねないので、注意が必要です。
フリーランスエンジニアの年収の上げ方
フリーランスエンジニアの場合は、単価を上げることが収入増に直結します。そのためには、よりよい条件の案件を受注できるよう、スキルをアップすることがやはり重要です。また、社員エンジニアにはないこととして、自分で営業活動をする必要もあります。
需要の大きいスキルを身につける
フリーランスの場合、需要に敏感になることが大切です。年収のことを考える前に、まずは常に仕事がある状態にすることを考えなければなりません。そうすれば収入は自ずと上がっていきます。
「この手の案件、いつも募集があるな」というようなものを見つけ、それに必要なスキルを習得しましょう。そういう案件が将来的にもたくさんあり続けるのか、という読みも必要になってきます。
スキルのレベルを上げる
需要の多いスキルを身につけたら、次は受注競争に勝つことを考えます。そのためには、他のフリーランスエンジニアよりもスキルのレベルを高くすることが必要です。自分の専門分野の知識をより深め、さらに隣接する分野にも挑戦して幅を広げましょう。
営業力を上げる
営業力も、フリーランスとしてやっていくためには必要です。クラウドソーシングで仕事の受注を目指す際にも、自分のスキルや実績をどうアピールするかで受注率が違ってきます。先輩フリーランサーの発信する情報なども参考にしながら、工夫してみてください。
フリーランスエンジニアが単価を上げるために何をしているのかをこちらの記事でまとめました!高収入を得ているフリーランスエンジニアが何をしているのかについて参考になるはずです!
個人を超えて
フリーランスエンジニアの多くは個人事業主ですが、十分な実績を積み、年収が上がってきたら、さらなるステップアップを考えてもいいでしょう。個人であることを超えて、会社設立を目指すのです。
ここから先が、会社勤めでは難しい、超高額所得者への道です。
法人化を視野に
「株式会社」や「合同会社」といった法人を設立することで、社会的信用度が上がるなど、様々なメリットを得られます。フリーランスとして年収が1000万円を超えるくらいのタイミングで法人化すると、節税効果も期待できます。
起業を目指す
株式会社や合同会社は社員1人でも設立できるので、個人事業主の延長のような感覚で仕事をすることができます。ただ、それに飽き足らなくなったならば、人を雇い入れるなどして会社を大きくすることもできます。本格的な「起業」をして、社長業に乗り出すのです。
そうすれば、個人では不可能だった大きな案件も受注できるようになります。他社からの仕事を請け負うだけでなく、自社で独自の製品やサービスを作り、一般に提供することも目指せるのです。夢は広がります。
もちろん、そのためにはエンジニアとしてのスキルとは別に経営者としての能力も必要になります。かなりの挑戦ではありますが、億万長者を目指すならそういう道もある、ということです。
まとめ
エンジニアへの需要は高く、高収入が期待できる職業と言えます。ただし、同じエンジニアでも持っているスキルの種類やレベルによって収入の格差があることも事実です。どうせなら高収入を目指して、日々スキルアップに励みましょう。