フリーランスが行うIT系の仕事の中でも、Web制作は非常に多くの案件数があります。
日本には何百万もの企業があり、その多くがホームページを持っています。それらのメンテナンスやリニューアルだけでも、案件は相当の数に上るでしょう。
さらに、1年間に新しくできる会社の数は10万を超えていて、仮にその何割かがホームページを外部委託で開設するだけでも、数万の案件が発生している計算になります。
今のは机上の計算で、本当のところはわかりませんが、とにかくWeb制作の案件は非常に多いということは言えるでしょう。
本稿では、需要の多いWeb制作に参入しようと目論むフリーランス志望の方のために、その仕事の内容ややり方についてご説明したいと思います。
Web制作会社とフリーランスの違い
企業などがWeb制作を外部に委託する場合、大体2つの道があります。Web制作会社に頼むか、フリーランスのWeb制作者に頼むか、です。
クライアントから見て、それらにはどのような違いがあるのでしょうか。
Web制作会社もフリーランスのWeb制作者も、「Webサイトを作る」という仕事内容に違いはありません。そのやり方が違うだけです。
ここでは、制作会社とフリーランスの、仕事のやり方の違いについて見ていきます。
Web制作会社
Web制作会社の大きな特徴は、複数の人が制作に携わるということです。
Web制作の工程は、クライアントとの打ち合わせ、プランニング、デザイン、コーディング、テストというふうに分かれています。
打ち合わせでは、クライアントと制作側が話し合い、どんなサイトにするか決めていきます。
プランニングでは、打ち合わせの内容を踏まえ、Webサイトの提供するサービスや機能などについての企画立案をします。
デザインでは、主にサイトの見た目を決めます。
コーディングでは、実際にブラウザ上に表示できるようにサイトを構築していきます。
テストでは、サイトがちゃんと動くかどうか確認します。
制作会社では、通常、これらをそれぞれ別の人が担当します。1人が複数の工程に関わることもありますが、それぞれの工程をそれぞれの専門家が行います。複数人で制作するスタイルです。
大規模なサイトを作るときには、多くのスタッフが投入されることもあります。いわゆる人海戦術です。
それぞれの工程を専任スタッフが作るので、高品質が期待されます。人件費がかかるぶん、料金は高くなります。
フリーランス
フリーランスのWeb制作者がサイトを作る場合、基本的に上記の工程を一人で行います。加えて、アクセスアップの対策を施したり、コンテンツの一部を作ったりする場合もあります。
なぜそうなっているかは、クライアントの立場に立ってみればよくわかります。1つのサイトを作るのに、工程ごとに別のフリーランスに頼んでいては、面倒だし時間がかかるからです。そんなことをするくらいなら、Web制作会社に頼むでしょう。
案件によっては、制作範囲が限定されることもあります。デザインはできていてコーディングだけとか、プランはできているのでデザイン以降をやって欲しいとか、今あるサイトのデザインを改善して欲しい、など様々なものがあります。
サイトが小規模で、費用を抑えたいときにフリーランスに発注される傾向があります。
Webサイト制作でフリーランスを目指す人が知っておくべきこと
Webサイト制作でフリーランスを目指す方に知っておいてもらいたい3つのことを紹介します。
実績・経験が武器になる
フリーランスとして働くにあたって、特に重要なのが実績や経験です。
Webサイト制作をフリーランスに頼む企業は数多くあります。中には、Webサイト制作に関する知識がほとんどない企業もあります。このような企業が、個人で仕事を頼む時に特に重要視するのは実績や経験です。
ポートフォリオなども参考にされることはあります。ただ、ポートフォリオは多くの人が同じようなものを作ってきますし、中には現存するWebサイトをそのままポートフォリオとして載せている人もいるので、それだけを見て判断するのは企業側にとってもリスクがあるのです。
そのため、多くの企業は実績や経験を重視します。逆に言うと、実績や経験があれば仕事を受けられる可能性が高いのです。まずは、実績や経験を獲得することを考えましょう。
簡単に単価は上がらない
「Webサイト制作は、最初は単価が低いけど、続けていれば単価はどんどん上がっていくよ」という人が多くいます。
しかし、そう簡単に単価は上がりません。なぜなら、フリーランスでWebサイト制作を仕事にしている方は数多く存在し、Webサイト制作で求められるプログラミングスキルはそこまで難しくないからです。
つまり、単価を上げようとしても、自分より低い単価で受けてくれる、同じようなスキルを持った他の人が数多くいるのです。
ただ、プログラミングスキルだけに関わらず、デザインやSEO、マーケティングのスキルとかけ合わせることができれば単価は上がっていきます。とはいえ、これらのスキルはプログラミングスキル同等以上に身に付けるのが大変なので、簡単には単価は上がらないと考えていた方がいいでしょう。
競争倍率が高い
Webサイト制作に必要なプログラミングスキルの習得はそこまで難しくありません。そのため、Webサイト制作をフリーランスで行っている方は、多いです。また、Webサイト制作は制作期間もあまり長くなく、オンラインでもできるので、副業として受注する方もとても多いです。
つまり、個人でWebサイト制作の案件を受注したいという方はとても多く、1案件当たりの競争倍率がとても高いのです。ここから、Webサイト制作をフリーランスで受注する人の中には、なるべく数多くの案件に応募するために時間を使ったり、単価の低い案件でも受けていくようになったりします。
ただ、このような段階で、精神的に少しつらいと感じ、辞めてしまう方も多いので、少し注意しましょう。
ここまで、フリーランスでのWebサイト制作について紹介してきました。一方で、Webサイト制作でフリーランスを目指していたものの、競争倍率が低く、案件の単価も高いという特徴があるWebアプリ開発の方が自分の目指すフリーランスエンジニアに近いことを知り、Webアプリ開発のフリーランスエンジニアになった方もいます。この点、詳しく知りたいという方は、ぜひ弊社の「COACHTECH」のサービスサイトをご覧ください。
COACHTECH 公式サイト:https://coachtech.site/
フリーランスでWeb制作するために必要なスキル
上で見た通り、フリーランスにWeb制作が依頼されるときには、複数の工程をこなすことが求められることが多くなっています。
クラウドソーシングサイトでよく見られる典型的なWeb制作案件は、以下のようなものです(いくつかの案件を参考にして作った架空の案件です)。
○○会社のHP作成
発注者:株式会社○○
サイトの種類:店舗ページ
依頼の目的・背景
新規店舗オープンにつき、ホームページを作成したいと思っております。
期待する効果
検索エンジンの上位に表示してアクセスを増やしたい
商品、サービスの認知度を上げたい
問い合わせを増やして新規リードを獲得したい
ページ数:1~5ページ
業務の範囲
企画・デザイン構成
デザイン
コーディング
CMS・WordPress導入
SEO対策
このように、「業務の範囲」のところにはほぼ最初から終わりまでやって欲しいと書いてあることが多くなっています。
コーディングだけとか、デザインだけとかいうふうに、ひとつのスキルしか持ち合わせていないと、獲得できる案件の幅は狭くなってしまいます。
ここでは、フリーランスのWeb制作者が仕事をするのに必要なスキルについて見ていきます。
コミュニケーション
クライアントと打ち合わせをするときなどにはコミュニケーション能力が必要です。
クライアントの求めるイメージがふわっとしているときには、上手く聞き取りを行ってデザインを固めていかなければなりません。そうしないと何度も修正が発生して、時間をロスすることになります。
また、案件を獲得する際にもコミュニケーション能力は発揮されます。営業メールやクラウドソーシングでの提案文の書き方に、気を配らなければなりません。文章力や交渉力も重要です。
デザイン
デザイン工程では、サイト全体の構成やレイアウト、ユーザーインターフェイス(UI)、配色などを決めます。ここで、サイトの見た目や使い勝手が決まります。
よいデザインを作るには、確かな知識が欠かせません。配色やUIにはルールがあり、それから外れるとユーザーに悪い印象を与えてしまいかねません。
クライアントのあらゆる要求に応えられるよう、日々、デザインの引き出しを増やしていく必要があります。
案件によっては、デザインに加えてイラストやアイコンの作成が含まれる場合もあります。総合的な「美術」の能力が要求されます。
プログラミングが得意な人の中には美術が苦手な人が多そうだと想像しますが、そこは努力あるのみです。
コーディング
デザインが決まったら、それに従ってコーディングを行います。
コーディングには、HTML、CSS、JavaScriptなどの言語を使います。当然、それらの言語の知識が必要です。プログラマー寄りの仕事になってきます。
ちょっとコードを変えてはブラウザで表示を確認する、という微調整を何度も行います。地道な、根気のいる作業です。
最近では、CMS(Content Management System)と呼ばれるシステムが導入されているWebサイトの案件もたくさんあります。CMSの定番であるWordPressではPHP言語を使ってサイトのカスタマイズなどをするので、その技能も求められます。
Web制作者として知っておくべき言語としては、以下のようなものがあります。
HTML&CSS
Web制作のコーディングにおける基本中の基本が、HTMLとCSSです。ブラウザに何をどのように表示するか、ということを記述するための言語です。Web制作者ならば、ここは避けて通れません。
HTMLはサイトの骨格を、CSSは色などの見た目を決めるものです。このふたつはセットで使われるため、書籍や学習サイトなどでも両方合わせて勉強することが多くなっています。
Webブラウザとテキストエディタさえあればよいので、すぐに学習をはじめることができます。
JavaScript
JavaScriptは、サイトに動的な機能を加えるのに使われる言語です。
マウスカーソルが通りかかった部分の表示を変えたり、数秒ごとに画像を切り替えたり、といった様々な効果を作ることができます。
HTML&CSSに比べると少し難しい部分もありますが、プログラミング言語の中ではとても易しい部類に入ります。
PHP
PHPは、主にWebサイトの開発に使われる、サーバーサイドの言語です。
例えばブログや掲示板などのWebサービスを作ることができます。HTMLに埋め込んで使えることからも、PHPのWebとの親和性の高さがうかがえます。
Web構築の世界を席巻するWordPressがPHPで書かれているということで、一躍脚光を浴びるようになりました。
PHPは文法的にはとても易しく、JavaScriptと同じく簡単に学べる言語です。Webサーバー上で動くため、学習のための環境構築はやや面倒です。
マーケティング
Webマーケティングもまた、Web制作者の仕事の範疇に入ってきます。
Webマーケティングとは、サイトへの集客をアップし、利益を挙げるための方法論の集合体です。
クライアント企業がWebサイトを構築したり、リニューアルしたりする主な目的は、利益を伸ばすことです。そのことは強く意識しておく必要があるでしょう。
案件によく含まれているのは、Webマーケティング手法の中でも「SEO対策」です。これは、その企業に関連するキーワードで検索されたとき、そのサイトが上位に表示されるようにする手法のことです。各検索エンジンの特徴を理解し、埋め込むキーワードなどを工夫します。
SEO対策なんてサイト制作とは全然別のスキルじゃないか、と言われるかも知れませんが、クライアント目線で見ればそれほど異な事ではありません。
SEO対策ではHTMLタグを最適化するのですが、どうせならHTMLでコーディングする人に最初から最適化してもらおう、というわけです。あとから別工程で修正するよりずっと効率的です。あとから修正するにしても、タグを書いた本人がやるほうがやりやすいでしょう。
集客というのは数字ではっきり結果が出るところですので、顧客満足度に直結します。おろそかにはできません。
未経験からwebサイト制作でフリーランスになるための第一歩は?
ここでは、未経験からWebサイト制作のフリーランスとしてどのような第一歩を踏み出せばいいのかを考えていきます。ぜひ参考にしてみてください。
プログラミングスクールに通う
まずは、プログラミングスクールに通う方法です。
プログラミングスクールに通う最大のメリットは、効率よくプログラミングスキルを身に付けることができる点と案件獲得までサポートしてもらえることがある点です。
未経験からいきなりフリーランスを目指す場合、多くの不安があると思います。特に、ほとんどの方が個人で案件を獲得するという経験はなく、自分でもできるのかなと思っているはずです。その点、スクールに通えばプロが手伝ってくれるので安心です。
Webサイト制作のフリーランスコースや副業コースなどを用意しているスクールも多いです。こちらの記事でまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
Web制作会社で勤める
次に、Web制作会社に勤めて経験を積んでから、フリーランスになる方法です。
Web制作会社に勤める中で色々なスキルを身に付けたり、人脈を作ったりすることができるのが大きな特徴です。ただ、フリーランスになるのが何年か遅くなってしまうでしょう。また、企業によってはプログラミング以外の作業ばかりやらされるということもあるようなので、注意が必要です。
加えて、Web制作会社に未経験から就職・転職するのはなかなか難しいです。しっかりとポートフォリオなどを準備しておくことが大切です。
独学
最後に独学という方法です。
一番お金がかからず、気軽に始められる方法です。また、Webサイト制作のプログラミングスキルは、十分に独学でも習得可能です。そのため、フリーランスを目指す方もまずは独学を試してみることはお薦めです。
ただ、独学だけではフリーランスとしての案件の取り方やWebサイト制作の仕事の進め方まで習得するのは難しいでしょう。また、プログラミングは挫折率がとても高いことで知られており、学習中に諦めてしまう方も多いです。
そのため、フリーランスを本気で目指しているのであれば、独学であっても現役のエンジニア等に教えてもらったり、相談出来たりする環境を作っておくと良いでしょう。
案件の取り方
上記のようなスキルを(全部ではないにしても)習得したならば、案件獲得に乗り出しましょう。
フリーランスとして働き始めた最初のうちは、ここが一番大変かもしれませんが、手はいろいろとあります。
直接営業
企業に営業をかけて直接仕事を取りにいく、という方法がまず考えられます。最も手っ取り早い方法と言えます。
営業先は、主としてWeb制作会社です。なんとなく、ここ、人が足りてないんじゃないかな、という会社を見つけたら、打診のメールを打つと、仕事をもらえることがあります。
この場合、チームの一員となって働くことが想定されます。場合によっては会社に出向いて作業することになるかもしれません。
このような営業スタイルは、たとえ空振りでも何も損はないし、数を打つ価値はあります。
ただし、失礼にならないようにメールの文面には細心の注意を払いましょう。
人脈を頼る
ツテを頼るのも、有効な営業方法です。
友達の知り合いとか知り合いの友達などを含めれば、輪はあっという間に大きく広がります。その中に、Web制作会社の人やWeb制作を計画している企業の人がいればしめたものです。顔をつないでくれるよう、お願いしてみましょう。
まったくコネのないところに営業をかけるよりも、少しでもつながりのあるところのほうが成功率は高まるでしょう。
クラウドソーシング
クラウドソーシングは、今、世界中で伸びているサービスです。様々な業種の企業が提示する案件とフリーランスワーカーをマッチングしてくれます。
Web制作の案件もたくさんあります。多くの企業が、Webサイトの新規構築やリニューアルをしてくれるフリーランスを求めています。
多くの案件では、目的や作業範囲が詳細に記されているので、現在の自分のスキルに合ったものを選んで応募することができます。
ただし、何の実績もない初心者が案件を獲得するのはなかなかハードです。コーディングだけなど、取り組みやすそうな案件には応募が殺到しがちで競争も激しくなります。
実績が足りずに案件が取りづらいならば、直接営業や人脈に頼った営業で実績を積み、ポートフォリオを充実させましょう。そしてスキルアップによって作業できる範囲を広げれば、徐々に案件獲得が容易になっていくでしょう。
経験者がよく言うのは、「1つ目の案件を獲得するまでが一番大変」ということです。それまでは、一にも二にもポートフォリオの充実です。
こちらの記事で、フリーランスエンジニアの営業について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
フリーランスのWeb制作者になるということは、Web制作の「何でも屋」になるということです。それぞれに奥深い各工程を、1人でこなすことが求められます。難しいことではありますが、見方を変えれば努力次第でとんでもない高みを目指すこともできるということです。各スキルを大いに磨き、他のフリーランスとの差別化を図って競争に勝ち残りましょう。