システム開発において重要な役割を担う「SE(システムエンジニア)」。働き方改革やインターネットサービスの発展から、フリーランスSEとして働く人が増えています。そのため、フリーランスのSEに興味を持つ人も多いのではないでしょうか?
しかし「フリーランスSEの仕事って何?」や「フリーランスSEにはどうやってなるの?」など、フリーランスSEに対して疑問が多い人もいるはずです。そこで今回は、フリーランスSEについて仕事内容や必要なスキルなど詳しく解説します。未経験からフリーランスSEを目指す方法も紹介するため、フリーランスSEに興味がある人はぜひ参考にしてみてください。
フリーランスSEの基礎知識
フリーランスSEについて、仕事内容や働き方といった基礎知識を分かりやすく解説します。
フリーランスSEの仕事内容
フリーランスSEの仕事は、システム開発全般を指揮することです。システム開発は、要求分析・設計・開発・テスト・運用と進んでいき、フリーランスSEはその工程をマネジメントします。
要求分析・設計フェーズでは、クライアントの要求を聞きシステムの概要を決定します。必要な開発期間や予算も算出し、クライアントに提案も行います。
設計フェーズでは、要件定義をもとにシステムを設計します。プログラマーがコードを書けるように、細かい部分まで設計します。
開発フェーズでは、スケジュール管理をします。進捗を聞きスケジュールを調整した結果、遅延していればクライアントに提案や報告をしなければなりません。またプロジェクトの予算や規模によっては、フリーランスSEがプログラミングに参加する場合もあります。
テスト工程では、開発したシステムが設計通りに動作するかテストします。リリース後のバグを減らすためにも、重要な工程です。
フリーランスSEの働き方
フリーランスSEの働き方は、常駐型と在宅型にわけられます。常駐型とは企業に実際に赴いて仕事をする働き方です。在宅型の案件の場合、自宅などからリモート環境で仕事をします。
働き方改革や感染症の拡大などからリモートが進むなか、フリーランスSEの案件の多くは常駐型です。その理由は、フリーランスSEがクライアントとやり取りする機会が多いためです。
適切な設計書づくりやシステムに関する提案をするためには、クライアントとの密なやり取りが欠かせません。これらのやり取りはリモートでも行えますが、対面での打ち合わせを希望する企業も多いのです。
フリーランスSEの年収を会社員と比較
フリーランス求人・案件サイトの「フリーランススタート」でフリーランスSEの求人案件を調べると、中央値単価は「60万円」です。これを年収に換算すると「720万円」となります。
一方会社員SEの平均年収は、求人サイトの「求人ボックス給与ナビ」によると「509万円」です。上記のことから、フリーランスSEは会社員SEに比べて200万円以上も年収が高いことがわかります。
設計やマネジメントは、システム開発の根底を担う重要な役割です。そのため深い知識やスキルが必要となり、そういった高度な人材を自社で確保できない企業は多くあります。そのためシステム開発ごとにスポットで雇えるフリーランスSEの需要は高く、年収も会社員SEに比べて高い傾向にあります。
フリーランスSEの将来性
フリーランスSEの将来性は、高いといえます。理由としてIT人材の不足やデジタル化が挙げられます。
みずほ情報総研が2019年に行った「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には最大で78.7万人ものIT人材が不足する可能性があります。さらにデジタル化が進みシステム開発案件が増えるため、企業はよりIT人材を求めることになるでしょう。
そのなかでシステム開発の主軸となるSEは、ITエンジニアのなかでも特に需要が高いです。またスポットで高スキルを持つ人材を雇えることからフリーランスを求める企業は多く、フリーランスITエンジニアの将来性は高いと考えられます。
フリーランスSEになるメリット
フリーランスSEになるメリットは、4つあります。
- 年収を上げられる可能性が高い
- 仕事内容や時間の自由度が高くなる
- 好きな仕事を選べる
- 人脈作りができる
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
年収を上げられる可能性が高い
先述した通りフリーランスSEの案件単価は高い傾向にあるため、フリーランスSEになることで年収を上げられる可能性は高いです。そのため年収が低くて悩んでいる人にも、フリーランスSEはおすすめの仕事です。
さらにフリーランスSEであれば、自分の努力次第でより年収を上げられます。実際にフリーランス求人・案件サイト「フリーランススタート」のSE案件の、最高月額報酬は「200万円」です。スキルを磨いたり人脈を広げたりしてほかのフリーランスSEと差を付けることで、より稼げる人材を目指しましょう。
仕事内容や時間の自由度が高くなる
フリーランスSEは自分で条件を提示できるため、仕事内容や時間の自由度を高められます。例えば「週4日しか働かない」や「プログラミングはせずマネジメントに徹底する」など、全てが自由です。
現在、働き方改革や情勢の変化といった理由から、仕事に対する意識改革が進んでいます。そのなかでプライベートと仕事を充実させるライフワークバランスが注目されており、フリーランスSEであれば、自分次第でライフワークバランスの実現も可能です。
好きな仕事を選べる
フリーランスのSEであれば、好きな仕事を選べます。「高単価な案件を受けよう」や「面白そうなシステムを開発したい」など、自分の価値観や条件で選択可能です。
会社員であれば、好きな仕事を選ぶわけにはいきません。嫌な仕事や理不尽な仕事であっても、ほとんどの場合拒否できません。そのため自分自身で仕事を決めて働きたい人にとって、フリーランスのSEになるメリットは大きいです。
人脈作りができる
フリーランスのSEになることで、人脈作りができます。
SEという仕事柄、フリーランスであってもほとんどの場合プロジェクトに参画することになり、クライアントやプロジェクトメンバーと知り合えます。そしていくつもの案件を受けることで、どんどんと人脈を広げていけます。
人脈が広がると、視野が広がったりビジネスチャンスが舞い込んできたりといったメリットがあります。限られた世界にとらわれず、人脈形成によって様々な情報や考え方に触れられるのもフリーランスSEの魅力です。
フリーランスSEになるデメリット
フリーランスSEになることで生じるデメリットは、以下の3つです。
- SE以外の雑務が増える
- 社会的信用度が低くなる
- 福利厚生がない
それぞれのデメリットについて、解説します。
SE以外の雑務が増える
フリーランスSEになると、仕事に関わる全てを自分でこなす必要があります。営業や請求書作成、クライアントとの交渉などSE以外の仕事が増えます。
会社員であれば各部署が担当を決めて仕事をするため、SEはエンジニア業に集中できます。しかしフリーランスになると、そうはいきません。特に確定申告に苦しむエンジニアは多いです。
フリーランスの増加とともに、フリーランス向けの様々なサービスがリリースされています。請求書や確定申告書などが簡単に行えるサービスもあるため、いろいろと活用していくことがポイントです。
こちらの記事でフリーランスエンジニアの確定申告について詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
社会的信用度が低くなる
フリーランスSEは「自営業者」に分類され、一般的に自営業者は会社員に比べて社会的信用度が低いです。そのためローンが組めなかったり賃貸が借りられなかったりといった問題が生じる可能性があります。
もし会社員であれば、フリーランスになる前に対策をしておくことをおすすめします。引っ越しやクレジットカード作成など、社会的信用度を必要とする作業はあらかじめ行なっておくことも手です。
福利厚生がない
フリーランスSEには、福利厚生はもちろんありません。年金や保険を全額自己負担しなければならないほか、有給といった手当も受けられません。
一方で、フリーランスの増加と共に、会社の福利厚生にあたる補償を展開するサービスも増えてきています。そういったものもうまく活用しながら、いざというときに困らないように備えることが重要です。
フリーランスSEに必要なスキル
フリーランスSEに必要なスキルを、SEとしての必要なスキルとそれ以外のスキルに分けて紹介します。
SEとしての基礎知識・スキル
SEとして必要な知識やスキルは、以下のとおりです。
- 基本的なパソコン操作
- IT全般に関する知識
- システム設計に関する知識・スキル
- プログラミング能力
それぞれの知識やスキルについて紹介します。
基本的なパソコン操作
フリーランスSEに限らず、エンジニアにとって基本的なパソコン操作能力は必須スキルです。パソコンが操作できなければ、そもそも仕事ができません。
基本的なパソコン操作とは、ブラウザの立ち上げやファイルの管理などです。ほかにもショートカットキーを覚えておくと、作業スピードを上げられます。代表的なショートカットキーは、以下のようなものです。
- Ctrl + Z:操作を元に戻す
- Ctrl + A:すべての項目を選択する
- Ctrl + C:選択項目をコピーする
- Ctrl + V:切り取り、もしくはコピーした項目を張り付ける
- Alt + Tab:アプリやウィンドウを切り替える
- Ctrl + P:ファイルを印刷する
ショートカットキーは、上記で挙げた以外にもたくさんあります。いろいろと覚えて、使いこなせるように練習してみてください。
IT全般に関する知識
システム開発の指揮をとるためには、IT全般に関する知識を網羅する必要があります。
IT全般に関する知識を身に付けるためには「基本情報技術者試験」の資格取得がおすすめです。基本情報技術者試験とは、エンジニアにとって必要なIT知識を網羅する試験です。資格取得の勉強を通じて、ITに関する理解を深められます。
また基本情報技術者試験は国家資格ということもあり、認知度が高いです。そのため取得しておいて損はありません。
システム設計に関する知識・スキル
システム設計に関する知識やスキルも必要です。要件定義・設計・開発・テスト、どのフェーズで何をするべきか知っておきます。またクライアントの要望に合わせて開発手法も選択しなければなりません。
システム開発に関する勉強法はたくさんあります。しかし実際に経験してみないとわからないことも多いでしょう。そのためプログラマーとしてプロジェクトに参画してみて、SEに必要な知識を得ることもおすすめです。
プログラミング能力
フリーランスSEにとって、プログラミング能力は必ずしも必要というわけではありません。しかしプログラミングスキルを身につけることで、論理的思考力がつき、プログラマーの考え方が分かるといったメリットがあります。
一言でプログラミングといっても、その種類は様々です。フリーランスSEを目指すのであれば、メジャーな言語を選択すれば大丈夫でしょう。「PHP」であれば学習難易度が比較的低いため、初めての学習におすすめです。
コミュニケーション能力
フリーランスSEにとって、コミュニケーション能力は重要です。
クライアントの要望を汲み取り、それに沿ったシステム設計をします。クライアントから無理な要求があった場合は達成不可能な理由を論理立てて説明し、提案を通さなければなりません。
プロジェクトメンバーともコミュニケーションを図る必要があります。適切なコミュニケーションがとれなければ、スケジュールが遅延したり、思ったようなシステムができなかったりといった問題が生じます。
マネジメント能力
プロジェクトを適切に管理するために、マネジメント能力も必要です。クライアントと打ち合わせをした結果をもとにスケジュールをひき、それに沿ってシステム開発を進めていきます。システム開発時には進捗を確認し、スケジュールを調整します。
また自分自身を管理する、セルフマネジメント能力も必要です。フリーランスという自由な働き方は、自分で自分を律しなければならないという側面があります。体調を崩さないように仕事量を調整したり、働けなくなったときのことを考えて貯金したり、セルフマネジメントを徹底することでフリーランスであっても安定して生活することが可能です。
論理的思考能力
論理的思考能力は、フリーランスSEにとって必須能力です。論理的思考とは、ものごとを順序立てて考える思考方法を指します。
フリーランスSEがシステムの設計をする際、作りたいシステムになるように一から順序立てて考えなければなりません。どのような処理を組み込めば思ったような動作をするのか、システム運用でどのようなエラーが起こりうるかを論理的に考えて取りこぼしのないように設計する必要があるのです。
また、論理的思考能力はフリーランスSEに限らず多くの社会人に必要な能力です。論理的に物事を組み立てると、発言に信憑性が増し発言に説得力が増します。ビジネスを円滑に進めるためにも、論理的思考能力を磨いていきましょう。
問題解決能力
フリーランスSEとして働いていると問題解決を迫られる場面が多くあるため、問題解決能力は重要なスキルです。例えば「クライアントから急な要件変更を依頼された」や「システム開発時に重大なバグが見つかった」など、問題は様々です。
フリーランスSEは、プロジェクトを指揮する存在です。そのため問題が起こった際は、フリーランスSEが解決策や方向性を提示しなければプロジェクトが止まってしまいます。不足の事態が起こっても冷静に、スピード感を持って適切な答えを出すことが重要です。
営業力
フリーランスは自分で仕事を獲得しなければならないため、営業力が必要です。営業力がなければ、仕事を得られず収入も途絶えてしまいます。
営業力を高めるためには、営業のための素材が必要です。ポートフォリオや経歴書、資格などがあればスキルを客観的に示せます。フリーランスSEになるための勉強をしつつ、こういったものも作成していきましょう。
この記事では、フリーランスエンジニアの営業の実態について紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
未経験からフリーランスSEになれる?
IT業界未経験者であっても、スキルを身に付けることでフリーランスSEになることは可能です。しかしSEという職業がプロジェクトの指揮のため、未経験からフリーランスSEを目指すためには膨大な学習時間とセンスが必要になります。実際、現在フリーランスSEとして働いている人のほとんどは、会社勤めから独立しています。
以上のことから、未経験者がフリーランスSEを目指す場合「プログラミングスクールに通う」→「一旦SEとして就職する」→「フリーランスSEとして独立する」という流れがおすすめです。
プログラミングスクールでは、プロの講師がカリキュラムに沿って効率的にプログラミングを教えてくれます。スケジュールも柔軟に設定できる場合が多いため、会社勤めの人であっても無理なく学習を進められます。
まとめ
フリーランスSEの仕事は、システム開発をマネジメントすることです。そのため、フリーランスSEにはSEに関する知識のほか、マネジメント能力や問題解決力が求められます。
フリーランスのSEになるメリットは、年収を上げられることや好きな仕事を選べることです。デメリットは、社会的信用度が低くなることや福利厚生がないことです。
プログラミングスクールに通うなどの方法でフリーランスSEを目指せます。年収が高く将来的にも需要が拡大していくと考えられる、そんなフリーランスSEに興味がある人は、1歩踏み出してみてはいかがでしょうか?