インフラエンジニアとは、ITシステムの基盤となる部分を構築するエンジニアです。そんなインフラ関連の仕事を、企業に属さないフリーランスとして行っている人がいます。そんなフリーランスのインフラエンジニア、気になっている人も多いのではないでしょうか。
この記事ではフリーランスのインフラエンジニアの仕事内容や将来性、必要なスキルなど、フリーランスインフラエンジニアについて徹底解説します。
フリーランスのインフラエンジニアの基礎知識
仕事内容や働き方、年収など、フリーランスのインフラエンジニアの基礎知識を紹介します。
フリーランスのインフラエンジニアの仕事とは?
フリーランスのインフラエンジニアエンジニアの仕事内容は、インフラ関係の設計・開発・保守です。そしてフリーランスのインフラエンジニアの仕事は、領域ごとに5つに分類されます。
- ネットワーク
- サーバー
- クラウド
- セキュリティ
- データベース
5つの領域の仕事内容を紹介します。
ネットワーク関連の仕事
ネットワーク関連の設計・開発・保守を行います。快適なネットワーク環境づくりはシステムの基礎であるため、重要な仕事です。
設計では、クライアントとやり取りをして設計します。ルーターなどのネットワーク機器の種類や数、使用する回線などを決めます。ネットワーク維持のコストやスケジュールも決定します。
開発では、設計時のスケジュールを元に実際にネットワークを構築していきます。大規模なネットワークの場合、数か月ほど開発に要する場合もあります。
運用開始したあとは、保守を行います。トラブル時にいち早く対処するのも、ネットワークエンジニアの役割です。
サーバー関連の仕事
サーバー関連の設計・開発・保守を行います。
設計では、クライアントとやり取りをしてサーバーを設計します。必要なサーバーのスペックや台数などを検討します。Webサーバーやメールサーバーなど、サーバーには種類があるため様々な要素を考慮しなければいけません。
開発では、実際にサーバーを購入して設置します。そのため、フリーランスであっても出社する必要があります。
運用開始後は、保守作業を行います。サーバーダウンするとシステムが動作しないため、素早い対処が求められます。
クラウド関連の仕事
クラウド製品を使用したシステムの設計・開発・保守を行います。コスト削減や開発スピードの向上などを目的に、インフラ環境を自社サーバーのオンプレミスからクラウドへ移行する企業が増えているため、クラウド関連の仕事は多いです。
設計では、クライアントとやり取りをしてクラウド環境を設計します。AmazonのAWS(Amazon Web Services)やマイクロソフトのAzureなど、クラウドの製品ごとの特徴も鑑みて設計を行っていきます。
開発では、設計をもとにクラウド環境を構築していきます。新規のクラウド環境の構築だけでなく、稼働中のオンプレミス環境の移行作業を行うこともあります。
運用開始後は、保守作業です。物理機器に関する作業がないため、オンプレミスに比べてリモートでも保守作業が行いやすいことが特徴です。
セキュリティ関連の仕事
情報セキュリティに関する仕事を行います。インフラはシステムの基盤となる重要なものです。そのためセキュリティレベルを上げて、外部からの攻撃を未然に防ぐ必要があります。また、脆弱性診断を定期的に行うことも重要です。
またセキュリティ事故の解決も、インフラエンジニアの仕事です。事故発生時は被害が拡大しないように、迅速に行動しなければなりません。
データベース関連の仕事
データベースの設計や開発、運用を行います。データベースとは、システムで使用する様々なデータを格納したものです。インターネット上で膨大なデータを収集できるようになった今、データベース関連の仕事の重要性も増してきました。
データベースにはOracle DatabaseやPostgreSQLなど、いくつかの種類があります。システムやクライアントの要望に合わせて、適切なものが選べるように学習しておくことが重要です。
フリーランスのインフラエンジニアの働き方
フリーランスのインフラエンジニアの働き方は、常駐型と在宅型にわけられます。
常駐型の場合、クライアントの会社に出向する必要があります。ルーターやサーバーの設置といった実機を操作することもあり、フリーランスのインフラエンジニアの案件は常駐型が多いです。常駐型は働く時間や場所が自由になりにくいですが、人脈が広がりやすいなどのメリットがあります。
在宅型の場合、自宅やカフェといった好きな場所からリモートで仕事ができます。クラウド関連の仕事であれば実機を操作する必要がないため、在宅でも仕事がしやすいです。
フリーランスエンジニアの案件相場
フリーランスのインフラエンジニアにはどんな仕事があるのか、フリーランスエンジニア専用のIT求人・案件検索サイト「フリーランススタート」に掲載されている実際の案件例を紹介します。
案件例 | 報酬 | 開発環境 |
大手通信会社向けのインフラ構築 | 月額50万円~65万円 | Linux、WindowsServer、AWS、Azure |
クラウドインフラの運用管理 | 月額75万円~105万円 | AWS、JP1 |
自社サービスのインフラ構築 | 月額150万円 | Kubernetes、Docker、Git、React、MongoDB |
上記の案件例からわかるように、フリーランスインフラエンジニアの案件相場は幅広いです。スキルアップすることで、高単価案件にも挑戦できるようになります。
フリーランスのインフラエンジニアの将来性
フリーランスのインフラエンジニアの将来性は高いです。その理由として、IT人材の不足が挙げられます。
みずほ情報総研が2019年に行った「IT人材需給に関する調査」によると、日本のIT人材不足は深刻で、2030年には最大で78.7万人ものIT人材が足りない可能性があるそうです。インフラエンジニアも例に漏れず、慢性的な人材不足に陥っています。
インフラエンジニアになるためには、インフラに関する深い知識とスキルが必要です。そんな高度なスキルを持つ人材を、企業はなかなか確保できずにいます。フリーランスであればインフラエンジニアをスポットで雇えるため、フリーランスインフラエンジニアは企業にとって非常に需要のある存在なのです。
フリーランスのインフラエンジニアになるメリット
フリーランスのインフラエンジニアになるメリットは、4つあります。
- 需要が高い
- 長期間の案件が多い
- 年収アップが期待できる
- 働き方を自分で選べる
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
需要が高い
先述した通り、インフラに関する深い知識とスキルを持つ人材をスポットで雇えるため、企業にとってフリーランスインフラエンジニアの需要は高いです。実際にフリーランスエンジニア専用のIT求人・案件検索サイト「フリーランススタート」のフリーランスインフラエンジニア案件数は21,971件と、多くの案件が募集されています。
デジタル化が進む現在、多くの企業がネットワークを活用して事業を運営しています。その基盤を担うフリーランスインフラエンジニアは需要が高く、仕事に困ることはないでしょう。
長期間の案件が多い
フリーランスのインフラエンジニアの特徴として、長期間の案件が多いことが挙げられます。理由は、インフラ関係は構築に時間がかかるためです。保守作業まで考えると、半永久的に仕事がある場合もあります。
長期間の案件では、収入が途切れる心配をする必要がありません。また案件に携わっている間は、営業を行わなくてすむためエンジニア業に注力できます。そのため、フリーランスエンジニアにとって長期間の案件はメリットが多いです。
年収アップが期待できる
フリーランスエンジニア専用のIT求人・案件検索サイト「フリーランススタート」に掲載されている、フリーランスインフラエンジニア案件の中央値単価は「65万円」です。これを年収に換算すると「780万円」になります。
このことからわかるように、フリーランスのインフラエンジニアの年収は高いです。そのためフリーランスインフラエンジニアになることで、年収アップが期待できます。
努力次第では、さらに収入を上げることも可能です。専門分野を確立したりインフラ構築とシステム構築が同時に行われる案件に参画したり、方法は様々です。努力することで、若くして毎月100万円以上稼いでいるフリーランスインフラエンジニアも多くいます。
働き方を自分で選べる
働き方を自分で選べる点も、フリーランスインフラエンジニアになるメリットです。例えば「単価の高い案件がいい」や「AWSの構築案件がいい」など、自分の条件やスキルにマッチした案件を自由に選択できます。
会社員であれば会社から与えられた仕事をこなさなければなりません。一方フリーランスのインフラエンジニアであれば、すべての選択を自分で行えるのです。
フリーランスのインフラエンジニアになるデメリット
フリーランスのインフラエンジニアになるデメリットは、2つあります。
- 収入が安定しない
- エンジニア以外の仕事が増える
それぞれのデメリットについて、解説します。
収入が安定しない
インフラエンジニアに限らず、フリーランスになると会社員に比べて収入が安定しません。例えば案件が獲得できなければ、当然収入はありません。体調を崩して仕事ができなくなっても、有給や雇用保険などがないため収入が途絶えてしまいます。
フリーランスインフラエンジニアは、こういった収入がなくなる可能性も考慮しながら働く必要があります。体調を崩さないように仕事量を調整したり、いざという時のために蓄えを作ったりしておくと安心です。
エンジニア以外の仕事が増える
フリーランスインフラエンジニアは、エンジニアの仕事のほかに請求書作りや営業といった仕事もこなさなければなりません。特に確定申告の時期になると、忙しくてプライベートの時間がほとんどなくなってしまったという人もいます。
エンジニア以外の仕事をこなしても、給与は支払われません。どれだけエンジニア以外の仕事を素早くこなすかが、フリーランスインフラエンジニアにとってポイントとなります。
フリーランスのインフラエンジニアに必要なスキル
フリーランスのインフラエンジニアに必要なスキルは5つあります。
- インフラエンジニアの基礎スキル
- プログラミング能力
- インフラエンジニアとしての実務経験
- コミュニケーション能力
- マネジメント能力
- 営業力
それぞれのスキルについて、詳しく解説します。
インフラエンジニアの基礎スキル
インフラエンジニアにとって、必要な基礎スキルは以下の5つの分野にわけられます。
- ネットワーク
- サーバー
- クラウド
- セキュリティ
- データベース
上記の分野の全てに関する知識を、スペシャリストレベルまで上げる必要はありません。最初は業務に支障がない程度に網羅すればいいでしょう。
そしてフリーランスのインフラエンジニアとして活動するなかで、専門分野を確立していくことをおすすめします。インフラエンジニアとしての専門分野があると、収入を上げやすくなるためです。
プログラミング能力
フリーランスのインフラエンジニアにとって、必ずしもプログラミングスキルが必要というわけではありません。しかしプログラミングができれば論理的思考能力を鍛えられるほか、案件の幅を広げられるといったメリットがあります。
IT未経験者がプログラミングを学びたいなら、おすすめはプログラミングスクールに通うことです。プログラミングスクールでは、プロの講師がカリキュラムに沿って効率よくプログラムを教えてくれます。そのため初心者であっても、挫折しにくい環境でプログラミングを習得できますよ。
おすすめのプログラミングスクールとその選び方をこちらの記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
インフラエンジニアとしての実務経験
フリーランスのインフラエンジニアとして活動したいなら、ある程度の実務経験が必要です。Web開発分野等であれば、その分野の案件開発の実績を身に付けることが出来れば、フリーランスとして活躍できる可能性をグッと高めることができます。
しかし、インフラエンジニアはシステムの根底を担う重要なエンジニアのため、未経験のフリーランスを雇ってくれる企業は少ないのです。「できる限り早くフリーランスのインフラエンジニアとして独立したい」そんな人には、以下の手順がおすすめです。
- プログラミングスクールに通う
- インフラエンジニアとして企業に就職する
- 2~3年後にフリーランスインフラエンジニアとして独立する
実務経験が2年以上で応募できる案件も多くあります。そのため、最低でも2年は会社員として実務経験を積むことをおすすめします。
コミュニケーション能力
フリーランスインフラエンジニアには、高いコミュニケーション能力が必要です。コミュニケーション能力がなければ、クライアントと適切なやり取りが行えません。適切なやり取りが行えないとクライアントの意向を汲み取れず、求められるようなインフラを開発できないのです。
コミュニケーション能力には、いくつかの要素があります。相手の意図を正しく読み取る力・論理的に意見を組み立てる力・自分の意見を適切に表現する提案力と、複合的にコミュニケーション能力を磨きましょう。
マネジメント能力
フリーランスにとって、自分自身をマネジメントする能力は必須です。マネジメントができないフリーランスは、仕事を取りすぎたりスケジュール管理ができなかったりと、うまく活動できない可能性があります。
フリーランスは、自分自身で様々な決定をしながら働きます。自由に決定ができる分、マネジメントを徹底して長く働けるフリーランスインフラエンジニアを目指しましょう。
営業力
フリーランスインフラエンジニアには、営業力も必要です。フリーランスは自分自身で営業をかけ、案件をゲットしなければならないためです。
営業力に自信がない場合、フリーランスITエンジニア専門のエージェントを利用することをおすすめします。仲介手数料はかかりますが、自身の条件やスキルにマッチする案件をエージェントが見つけてくれるため、通常よりも営業活動が楽に行えます。
フリーランスエンジニアの営業についてはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
フリーランスのインフラエンジニアが収入アップを目指す方法
フリーランスのインフラエンジニアが、収入アップを目指す方法は以下の4つです。
- 人脈を広げる
- トレンドを意識する
- エージェントを頼る
- 資格を取得する
それぞれの方法について、解説します。
人脈を広げる
人脈を広げることで、ビジネスチャンスを掴めたり条件のいい案件を紹介してもらえたりと、年収アップに繋がる可能性があります。思わぬチャンスが舞い込んでくることもあるため、積極的に人脈を広げることをおすすめします。
人脈を広げるためにも、セミナーや勉強会への参加するといいかもしれません。人脈を広げるほか、新しい知識や情報も得られて一石二鳥です。
トレンドを意識する
トレンドを意識することで、年収を挙げられます。トレンドの技術に関する案件は数が多く、企業は人材確保のために案件単価を上げざるを得ないためです。
速いスピードで進化するIT業界において、トレンドの移り変わりも早いです。新しい情報をキャッチするためにも、積極的に情報収集するように心がけることがポイントです。
エージェントを頼る
エージェントを頼ることで、より条件がいい案件を見つけられるかもしれません。条件や希望を提示すれば、エージェントは多くのIT案件からマッチするものを見つけ出してくれるためです。
「レバテックフリーランス」や「Midworks」といった、フリーランスITエンジニア専門のエージェントもあります。登録無料のサービスも多いため、試しに登録してみるといいかもしれません。
資格を取得する
フリーランスのインフラエンジニアが資格を取得することで、知識やスキルを客観的に証明できます。案件によっては資格があれば単価が上がる場合もあるため、積極的に取得していきましょう。
フリーランスのインフラエンジニアにおすすめの資格は、6つあります。
- ネットワークスペシャリスト試験
- データベーススペシャリスト試験
- 情報処理安全確保支援試験
- AWS認定
- LINUX技術者認定
それぞれの資格について、説明します。
ネットワークスペシャリスト試験
ネットワークスペシャリスト試験とは、ネットワークに関する知識やスキルを証明する国家資格です。ネットワークに関する基礎から応用まで、幅広い内容が出題されます。
ネットワークスペシャリスト試験はIT系の国家資格の中で最上位に分類され、資格難易度は高く設定されています。論述形式の問題も出題されるため、合格には学習時間が必要です。
データベーススペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験とは、データベースに関する知識やスキルを証明する国家資格です。データベースに関する基礎から応用まで出題され、資格を取得することで深い知識とスキルを証明できます。
データベーススペシャリスト試験はIT系の国家試験の中でも、資格難易度は高く設定されています。データベースの種類を問わずにスキルが証明できるため、データベース関連のスペシャリストを目指す人におすすめです。
情報処理安全確保支援士試験
情報処理安全確保支援士試験とは、サイバーセキュリティ分野に関する知識やスキルを証明する国家資格です。サイバー攻撃に対抗する、ホワイトハッカー向けの資格ともいえます。
インフラに限らず、システム開発においてセキュリティ強化は重要な課題です。そのためセキュリティに明るいエンジニアの需要は高く、情報処理安全確保支援士試験も注目を浴びています。
AWS認定資格
AWS認定資格とは、Amazonが提供するクラウドサービス「AWS」に関する知識やスキルを証明する資格試験です。AWSはシェア率が高いため、クラウド関係の資格を取りたいならAWS認定試験をおすすめします。
AWS認定資格はFOUNDATIONAL・ASSOCIATE・PROFESSIONAL・SPECIALTYの4つのグレードのなかに、12種類の試験があります。簡単なCLFから取得して、徐々にステップアップしていくことが一般的です。
Linux技術者認定
Linux技術者認定とは、Unix系のOSである「Linux」に関する知識やスキルを証明する資格試験です。Linux関連の案件は多くあるため、取得することで案件幅が広がる可能性があります。
Linux技術者認定には「LPIC」と「LinuC」の2種類あります。LPICは世界基準の資格、LinuCは日本独自の国内向け資格です。
シスコ技術者認定
シスコ技術者認定は、シスコシステムズ製品に関する知識やスキルを証明する資格試験です。ネットワーク関連の仕事を専門にしたい人に取得をおすすめします。
シスコ技術者認定は、エントリー・アソシエイト・プロフェッショナル・エキスパート・アーキテクトの5つのレベルにわかれています。各レベルはさらに9つの分野を持っているため、業務や業界に適した資格を選択可能です。
フリーランスエンジニアの資格はこちらの記事でも詳しくまとめています。興味のある方は、ぜひ読んでみて下さい。
まとめ
フリーランスのインフラエンジニアの仕事は、ネットワーク・サーバー・クラウド・セキュリティ・データベースの5つの領域にわけられます。どれもITシステムの基盤となる重要な仕事です。
フリーランスのインフラエンジニアになることで、年収アップが期待できたり働き方を自分で選べたりといったメリットがあります。その一方で、収入が安定しないことやエンジニア以外の仕事が増えるといったデメリットがあります。
フリーランスのインフラエンジニアになるためには、ある程度の実務経験が必要な場合がほとんどです。「できる限り早く独立したい」という人は、プログラミングスクールに通ってから一旦企業に就職して、2〜3年ほど実務経験を積むことをおすすめします。