フリーランスと自営業の違い、あなたはちゃんと知っていますか?
「なんとなく言葉は聞いたことあるけど、具体的にフリーランスと自営業の違いがよくわからない」という人は、この記事を読むことによって、その疑問を解決できるでしょう。
似ていますが微妙にニュアンスが異なるフリーランスと自営業の違いについて言葉の定義を説明しながら、この記事では解説していきます。
また、フリーランスになることのメリットやフリーランスとして活動するためにやっておくべき準備についても説明していきます。
フリーランスとは
フリーランスとは、会社や組織に所属することなく、仕事に応じて契約を結ぶことによって働く人のことを指します。
インターネットが普及した現代社会においてフリーランスとして生計を立てている人は増加傾向にあります。また、「副業」もフリーランスと同じようなニュアンスで用いられることがある言葉ですが、異なる意味があります。
フリーランスは完全に本業として個人で企業と業務委託契約を結んで活動します。副業は、企業と雇用契約を結びながらも、仕事のすきま時間を使って仕事を行います。フリーランスは独立した事業者なのです。
プログラマー・デザイナー・ライター・イラストレーター・税理士など、自らの持つスキルを活かしながら様々な職種で仕事をしている人が多く、仕事の量や質を自分である程度決定できる点がフリーランスの魅力と言えるでしょう。
会社や組織に属さないので、収入は自分の頑張り次第で、良くも悪くも変動することが多いです。また、仕事の量を自分で自由に決めることができるのも特徴の1つ。
中世ヨーロッパで、権力者に個人契約で仕えた騎士をフリーランス(フリー=自由な、ランス=槍、当時の騎士の武器は槍【ランス】だったことから)と呼んだことが名前の由来とも言われています。
自分のビジネスを行っていなくても活動できるのがフリーランスです。仕事を通じて信頼関係を築き、クライアントを複数抱えていると、それなりの安定収入源は確保することができるでしょう。
自営業とは
自営業とはその名の通り、自分でビジネスを営んでいるということを意味します。また、個人事業主という言葉と意味は同じになります。
サラリーマンのように、企業や組織と雇用契約を結んで働くことで収入を得るのではなく、独立して自らの事業を営み収入を得ています。
個人でビジネスを行う個人事業主になるので、仕事の責任は全て当人になります。組織に属していないということは、それだけ責任も大きく自分にのしかかってくるのです。
個人事業主の場合、業務に関係する費用であれば、かかった費用を経費として計上することが可能です。会社員が仕事で必要なものは会社が負担してくれるように、自営業の場合は経費として計上が可能というわけです。
自身でお店や事務所を持っている場合は、自営業として分類されるので、職種や業種は多岐にわたります。例えば、美容院経営者・バー経営者・輸入雑貨店オーナーなどが挙げられます。
自営業の場合、全ての意思決定を自らが行っていく必要が出てきます。営んでいるビジネスの規模に関係なく、自らの手で一通りの手続きを行わなければいけないのです。そのため、それ相応の覚悟や意思がある人でなければ厳しい働き方だと考えられますね。
フリーランスと自営業の違いは?
似て非なる存在であるフリーランスと自営業。企業に所属することなく、独立して仕事を受け、自らのスキルで仕事を獲得し収入を得ていくスタイルはどちらも変わりません。
自営業の場合、自らの報酬を自分で決めることができる点は魅力と言えるでしょう。フリーランスでは、クライアントの決めた報酬に同意して契約を結んで仕事を行うので、自分の報酬はクライアントに決定権があります。
フリーランスと自営業では、会社や組織に属せずにお金を稼ぐので、お金の稼ぎ方という観点からみると大きな違いはありません。ですが、働き方という観点からフリーランスと自営業を比較した場合、少し違いがあります。
フリーランスは時間や場所に縛られることなく仕事ができる点が特徴の1つです。PCとネットワーク環境さえあれば仕事が完結してしまう職種も存在しますからね。カフェやコワーキングスペースを拠点に活動するフリーランスの方も実際多いです。
しかし、美容院や飲食店などの実店舗を経営したり、事務所を借りてビジネスを行う自営業者の場合、実店舗での営業が前提であるため、働くための場所と時間にどうしても制約がかかってきます。
以上を踏まえると、
- フリーランスの方が自営業よりも場所・時間に囚われることのない自由な働き方が可能
- 自営業は報酬を自分で好きに決定できるが、フリーランスはクライアントが報酬を決める
という点がフリーランスと自営業の顕著な違いであると言えるでしょう。
様々なワークスタイルがあるので、一概に「フリーランスの方が自営業より良い」などとは言えないのが実際のところです。希望のワークスタイルは人によって違うのですから。
フリーランスになるメリット
ここからは、フリーランスとして働くメリットをいくつか紹介していきます。自分が責任を負わなくてはいけない反面、そのメリットも確実に大きいです。
自分の頑張りで収入を上げられる
企業に属し、給与をもらって生計を立てる会社員といえど、なかなか思うように給与が上がっていかないケースは珍しいことではありません。
このご時世、企業に頼りきって生きていくのはあまりにも危険という意見もあるくらいですからね。フリーランスが注目されるのも無理もありませんよね。
会社員の場合、給与アップには自分以外の因子が絡むことが良くあります。例えば、企業全体の業績や、所属する部署の会社への貢献度などです。
このように、個人でどうにもならない要因が収入の増減に関わってくるシーンが、企業や組織で働くと見られる場合があります。
フリーランスでは仕事の責任が全て自分にかかっている分、収入も自分の頑張りに比例してアップしていく傾向があります。
会社員の場合、どうしても、給与の上げ幅に天井があることは事実。一方のフリーランスの場合は、自分のスキルを磨けば磨くほど収入はアップしていきます。
楽な道ではないかもしれませんが、自分次第でどこまでも行ける、夢があって魅力的な生き方だと言えますね。
自分の好きな仕事ができる
フリーランスの場合、仕事の裁量権は、他の誰でもない自分にあります。自分が社長みたいなものです。
会社員の場合、会社から給与を受け取る代わりに労働を提供しています。フリーランスの場合は、仕事が自分に直接依頼されている形なので、他人の指示(会社員の場合は上司など)に従わなくても大丈夫です。
つまり、仕事の裁量権が自分にあることで、自分の好きな仕事を選んで行えるということになります。
会社員は、苦手な仕事も頑張って無理をして行わなくてはいけません。しかし、フリーランスであれば、自分の強みを生かして、できそうな仕事のみを受注して働くという選択肢を持つことができます。
要するに、得意・好きなことに注力して、ストレスの少ない働き方を実現することが可能なのです。
得意分野を徹底的に極めて、それを価値としてクライアントに提供していくことで、クライアントとの信頼関係も生まれ、お互いにとってメリットのある状況を生み出していけます。
自分の好きな仕事を自分で決めて働くことができる、フリーランスの大きなメリットではないでしょうか。
自由な働き方が実現できる
フリーランスであれば、自分に都合よく、自由な働き方が実現できます。ただし、その分の責任も負う覚悟が必要です。
場所と時間に関係なく働けることの恩恵を存分に活かせば、自分の趣味、家族や大切な人との時間を十分に確保しながらストレスの少ない生活を送ることが可能です。
会社員の場合、定時や定年など、決められた社内のルールに則って仕事をする必要があるのですが、フリーランスの場合にはクライアントの求めるスキルがある以上、年齢に関係なく働くことができます。
仕事スケジュールを柔軟に決めれば、まとまった時間を確保することも会社員以上に簡単です。そのため、海外旅行なども自分次第でいつでもスケジューリング可能です。
会社員は、会社の決まりで副業やアルバイトなどが禁止されていることが多いのですが、フリーランスであれば会社からの縛りなどは一切ありません。
自由にやりたいことができるので、気になっていた副業や、趣味的にやってみたかったアルバイトなどにも手を出すことが容易ですし、髪色などもド派手にしても特に問題ないです。
自由な働き方ができることで、自己実現という意味でも人生を楽める人もいるでしょう。自由を求める人の生き方の選択肢として、フリーランスは最適かもしれません。
フリーランスになる準備
ここまで、フリーランスになるメリットについて解説していきましたが、ここからは、いざフリーランスになるためにどのような手続きや準備が必要なのかについて見ていきます。
開業届の準備
開業届(正式名称「個人事業の開廃業届出書」)とは、個人事業を始めるということを税務署に知らせるための公的な届出のことです。
フリーランスになる際、税務署に開業届を提出すると良いでしょう。開業届を提出しなかったからといって、ペナルティが生じることはありませんが、事業主として公的な証明になるので開業届を提出しておいて損はありません。
開業届を提出する事による、フリーランスへのメリットは、
- フリーランスとしての自覚と覚悟を意識できる
- 青色申告で確定申告ができるようになる
- 小規模企業共済に加入可能
- 開業届を各種証明書として使用できる
などが挙げられます。それぞれのメリットについて少し詳しく説明していきます。
- フリーランスとしての自覚と覚悟を意識できる
これは、人による部分もあるのかもしれませんが、正式に税務署に書類を提出することで気が引き締まる人もいるようです。自覚と覚悟を持って働くためにも開業届の提出が、気合い入れになる人もいるでしょう。
- 青色申告で確定申告ができるようになる
確定申告はフリーランスとして活動するには必須です。確定申告にも青色申告と白色申告がありますが、節税の観点でより優遇されているのは青色申告です。
開業届を提出していれば、よりメリットの大きい青色申告で確定申告ができるのです。
- 小規模企業共済に加入可能
会社員であれば、退職時に会社から退職金を受け取ることができますが、フリーランスには退職金がありません。
そこで役に立つ制度が、小規模企業共済。退職した時や、廃業した時に給付金の支援が受けられる制度であり、開業届を提出しているフリーランスであれば加入することができます。
フリーランスからすると、メリットしかないので、開業届を提出したら小規模企業共済に加入することをオススメします。
- 開業届を各種証明書として使用できる
銀行での融資の申し込みや、ビジネスの各種手続きの際に、開業届の控えを証明書的に利用することができます。
信用面でも開業届は様々なシーンで効果を発揮するでしょう。
一方で、開業届を出す際の注意点もあります。開業届を提出すると、失業手当がもらえなくなります。
開業届を出すと、「事業主」として扱われます。失業し、再就職のために就職活動をしている人に支給される失業手当は「事業主」にはもちろんのこと支給されません。
フリーランスとして独立する前に、ある程度、資金繰りの目途を立てておくのが良いでしょう。貯金なしで、いきなりフリーランスとして独立するのはリスクが大きいですよね。
これら以上のことを踏まえ、フリーランスとして本格的に活動を進める人は、開業届を提出するのがオススメ。
確定申告の準備
確定申告とは、1月1日から12月31日の1年間に得た所得・経費から所得税を計算して、税務署に申告する手続きです。具体的には翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告書を提出します。
確定申告には、前述のとおり、青色申告と白色申告が存在します。青色申告は税務署の承認が必要なので、開業届を提出していないフリーランスの人は白色申告のみしかできないということになります。
白色申告は比較的簡単で、収入欄の合計から、支出欄の合計を引き算したものの残高がわかればOK。手軽に計算でき、専門的な知識が無くても何とかなる部分が大きいです。
青色申告は税務署の指導下で、「現金出納帳」「総勘定元帳」などの必要書類を用意し、正式な簿記のルールに則って書類を作成します。
手間がかかる分、節税優遇のメリットを受けることができます。フリーランスとして生計を立てていく人は、開業届を提出し、青色申告をすることが望ましいといえます。
確定申告を行うには確定申告書を入手する必要があります。そのための方法をいくつか紹介しておきます。
- 国税庁ホームページからファイルをダウンロードして、カラープリンターで出力して入手する。
- 税務署から郵送で取り寄せる。
- 税務署・市区町村役場に直接出向いて書類を受け取る。
確定申告書には確定申告書Aと、確定申告書Bの2種類がありますが、フリーランスの人に必要なのはB様式の方になります。お間違えの無いように。
最近では、スマートフォンを用いて確定申告を行うことも可能な場合があります。電子申告サービスのe-Taxを活用し、マイナンバーカードがあれば自宅で手軽に確定申告を行えます。
確定申告が面倒だからといって、確定申告を行わないフリーランスの人や、ばれなければ大丈夫なんじゃ、と思った人もいるかもしれません。しかし、確定申告をすっぽかした人にはペナルティがあります。
確定申告をしないことは税金の滞納を意味します。代表的なペナルティに、税金を滞納したことによる延滞税の加算や、日常生活でローンを組めなくなったり国からの手当が受けられなくなったりするというものがあります。
フリーランスとして活動するなら、確定申告はしっかりと知識を付けて正しく行ってくださいね。税金面のみならず、日常生活にも不利益を被ることもあるので。
保険切り替えの準備
国民健康保険法に基づいて、日本国民には必ず公的医療保険に加入する義務があります。会社員は健康保険に加入しているので問題ないのですが、フリーランスとして活動していく場合には健康保険の任意継続か、国民健康保険への加入手続きが必要になります。
- 健康保険の任意継続保険
退職以前の会社の健康保険制度にそのまま継続で加入する制度です。全国健康保険協会の健康保険の場合は、任意継続が可能な期間は最長で2年になります。継続して2ヵ月以上の被保険者期間があり、退職してから20日以内に手続きを進めなくてはいけません。
1日でも手続きが遅れた場合には、いかなる理由があったとしても任意継続保険に加入することができなくなるので、手続きの期間には注意が必要です。
条件を満たすことで、家族を扶養に入れることができます。その際、家族の保険料はかからないというメリットがありますが、保険料が全額自己負担になるということは念頭に入れておきましょう。(会社員は保険料を企業と折半)
- 国民健康保険
地方公共団体が運営する健康保険である、「国民健康保険」。社会保険に入っていない自営業者・農家・20歳未満の学生、会社を退職した人などが加入対象です。
国民保険には扶養制度が存在しません。つまり、一人一人に保険料を納める義務があるということです。国民保険に切り替えた場合、世帯全体の保険料負担は大きくなってしまうことに注意しましょう。
国民保険に加入するには、退職日から14日以内に手続きを行う必要があります。国民健康保険への加入を希望する場合は期限を忘れずに手続きを行ってください。
企業に雇われている時は、保険の手続きは企業が代行して行ってくれるので個人への負担は少なかったでしょう。フリーランスになるということはそのような煩わしい手続きも自分の責任で行う必要があるということです。
フリーランスとして活躍する為の準備として、保険切り替えの手続きも忘れずに行うようにしましょう。
まとめ
今回はフリーランスと自営業の違いや、フリーランスになるメリット・準備することについて解説してきました。
ポイントをまとめると、
- フリーランスは仕事に応じて契約を結ぶ、自営業は自分でビジネスを展開
- フリーランスは自営業よりも働く場所や時間に縛られない
- フリーランスは好きな仕事で自由な働き方が可能
- フリーランスは自分次第で収入が天井なく上がる
- フリーランスで活動するために、開業届・確定申告・保険切り替えの準備が必要
という感じになります。
働き方が多様化している現代社会において、フリーランスという生き方がマッチする人もたくさんいると思います。自己実現の手段としてフリーランスに転身するのもアリだと思います。
この記事が、あなたのフリーランスに対する知識の増進に役立てたなら幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。